自民党の森山裕幹事長は2日、参院選結果の責任を取り、退任する考えを表明した。扱いは石破茂首相(党総裁)に一任するという。他の幹部も辞任意向と報じられており、当面の政権継続に意欲を示す首相は窮地に立たされた。

石破茂首相と自民党の森山裕幹事長

森山氏が総会後の記者会見で、両院議員総会での自身の発言を明らかにした。石破首相から慰留された場合の対応については明言しなかった。

石破首相は森山氏の進退について適切に判断するとした上で、「余人をもって代えがたい方だと今でも思っている」と記者団に語った。自身に関しては物価高対策などに取り組む姿勢を示し、「しかるべき時に責任を判断する」とした。具体的な時期を問われたが、「早ければ早い方が国のため、国民のためだ」と述べるにとどめた。

政権の要である森山氏が退けば総裁選前倒しによる退陣論の勢いが増す。財務副大臣などを経験した森山氏は財政規律を重視する立場で、野党が求める消費税減税には一貫して慎重だっただけに、要職を外れることで今後の経済財政運営にも一定の影響を与えそうだ。市場では超長期金利の上昇圧力になるとの警戒感もくすぶる。

共同通信によると、鈴木俊一総務会長と小野寺五典政調会長も退任の意向を首相に伝えた。参院選総括の両院議員総会終了を受け、自民党は党所属国会議員と都道府県連に対し、臨時総裁選実施の賛否を確認する手続きを開始する。書面提出による意思確認が8日にも行われるとNHKが報じた。

森山幹事長の辞任表明を受け、外国為替市場では政局流動化への警戒から円売りが進んだ。円は対ドルで一時148円79銭と8月1日以来の水準に下落した。

あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、森山幹事長が辞任となれば石破首相の退陣が意識されるため、円売りにつながったようだと指摘した。

 

首相は「地位にしがみつくつもりない」

両院総会の冒頭で石破首相は参院選大敗について党総裁として陳謝した。当面は経済などに道筋を示すのが責任だと指摘。「地位にしがみつくつもりは全くない」としたものの、進退について明言はしなかった。

石破首相は参院選大敗は総裁たる自分の責任であり、「逃れることは決してない」と語った。その上で、物価高や日米関税交渉、農業政策、防衛力強化、防災などの課題に道筋をつける必要があるとした。

ブルームバーグが入手した参院選の総括報告書では、内閣支持率の低迷や、物価高対策で掲げた現金給付が野党の主張する減税に対抗できなかったことを敗因に挙げた。政治資金を巡る不祥事、若年層や一部保守層の支持離れも指摘。「解党的出直し」に取り組むとしたが、首相個人の責任に関する具体的な記述はない。

内閣支持率

報道各社が8月に実施した世論調査で内閣支持率は軒並み上昇していた。日本経済新聞社などが同月29-31日に実施した調査では42%と、半年ぶりに内閣支持率が4割台に回復した。7月の前回調査は石破政権発足後で最低の32%だった。共同通信の約1週間前の調査でも7月より12.5ポイント上昇し、35.4%となった。

石破首相は参院選大敗後も、日米関税合意の実施に向けた対応などを理由に続投方針を維持してきた。自動車関税を15%とすることで合意したが、大統領令は発出されておらず、一律関税に関しても合意内容に沿わない関税率が課されたままだ。8月下旬には各国首脳と相次いで会談するなど、精力的な外交に取り組んでいた。

(石破首相の発言などを追加し、更新しました)

--取材協力:野原良明、村上さくら、山中英典.

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