みずほフィナンシャルグループ(FG)傘下のみずほ証券は、グループ内銀行との連携を一層深めることで、2030年度にもアジアトップの投資銀行を目指す考えだ。

グローバル投資銀行部門長を務める南條豊常務執行役員がブルームバーグとのインタビューで明らかにした。同部門は米国事業からの収益が大きな柱を占め、アジアや欧州での事業強化が課題となっている。稼ぎ頭である米国事業で成功した銀行・証券の連携モデルを活用しつつ、アジアや欧州での強化につなげる。

南條氏は「国をまたいだクロスボーダーのM&A(企業の合併・買収)を捕捉するために、グローバルなコラボレーションが必要」として、銀行・証券事業を一体で担う「ユニバーサルバンク」への移行を進めていくと説明。「商業銀行と投資銀行ビジネスの一体的な運営を強化し、アジアナンバーワンの投資銀行を目指す」と語った。

今後5年から10年での地位確立を目指す。みずほFGは30年度に投資銀行業務のグローバルでのリーグテーブルで10位以内を目指している。

みずほFGの資料によると、前期(25年3月期)の日本を含めたアジア太平洋地域での債券引き受け業務(DCM)や株式引き受け業務(ECM)、M&A助言業務などを合わせた手数料収入のシェアは8.5%と3位だった。首位は野村ホールディングスの11.3%で、米モルガン・スタンレーが11%と続く。

 

アジアや欧州では、DCMに強みがある一方、弱いECMやM&A助言を強化する。商銀と投資銀の両機能を備えたバンカーの育成を強化するほか、外部からの人材登用も進める。昨年10月にはフランス・BNPパリバ出身のヨリス・ディルクス氏をアジアのバンクオブヘッドに起用した。

欧州みずほ銀行とみずほセキュリティーズヨーロッパを合併するなど4拠点を集約した。今年7月には再生可能エネルギーとエネルギートランジション(移行)に特化した英国のM&A助言会社オーガスタの買収も発表。南條氏は「欧州はサステナビリティーの中心地なので、ESGへのコミットを続ける」と語った。

米では常時トップ10入りを

一方、世界最大の金融市場である米国での前期の投資銀業務の手数料収入シェアは1.6%と14位だった。トップ10入りを狙う集団に位置する。日系の金融機関でみずほに次ぐのは、三菱UFJフィナンシャル・グループの20位だ。

米国では15年に英金融大手のロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(現ナットウエスト・グループ)の北米企業向け貸出債権を取得したのを皮切りに事業を拡大。23年にはM&A助言のグリーンヒルを買収した。

 みずほ証券の南條豊常務執行役員(8月25日、都内)

南條氏は「米国では他社に先んじて独自のプラットフォームを構築し、日系証券会社をリードできている。ライバルはUBSやBNPパリバといった欧米系の投資銀行だ」と述べ、トップ10入りの常連を目指す考えを示した。

日本では、相手先企業の意向に反した「同意なき買収」を提案するケースが増えている。南條氏は資本市場のスタンスが確実に変わってきたと指摘し、同買収が当たり前になる時代が到来するとみる。

同意なき買収に対するM&A助言業務の引き受けについては、「簡単な判断ではない」と語った。企業価値の向上に資するのか、日本の競争力強化につながるかといった議論を深めて「大義があれば引き受ける。1件ずつ丁寧に対応したい」と述べた。

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