(ブルームバーグ):フランスで9月8日に予定されているバイル首相の信任投票で、主要野党3党が政府打倒に動こうとしている。企業が採用や投資を見送る中、政治の不安定化は、始まりかけていた同国の経済回復を危険にさらす可能性がある。
国民議会(下院)の主要野党の極右・国民連合(RN)と急進左派政党「不屈のフランス」、中道左派の社会党が不信任投票の意向を示している。企業経営者の注目は、次期政権がどのように支持を集め、フランスが抱えるユーロ圏最大の財政赤字の縮小に取り組むのかに集まりそうだ。
仏金融グループのオッドBHFのストラテジスト、トマス・ズロウォツキ氏は「一部のフランス企業は、採用計画や投資判断に踏み切る前に予算が可決されるのを待とうとするだろう。停滞する経済の中で、関税を巡る不透明感がすでに強かったが、今やさらに悪化している」と語った。
昨年7月の解散総選挙でマクロン大統領率いる与党が大敗して以降、非金融企業の投資は四半期ごとに縮小かゼロ成長が続いている。もし経済成長率が再び落ち込めば、ここ数カ月、在庫の積み増しによって予想を上回る拡大を見せてきた生産を押し下げることになる。


フランス企業はまた、借り入れコスト上昇の脅威にも直面している。電力設備メーカーのシュナイダーエレクトリックや機器レンタルのエリスのように、国内経済への依存度が比較的低い企業が、今週の社債発行で強い需要を集めてはいるが、国債利回りが上昇すれば、最終的に影響を受けることになる。
フランス10年債と同年物ドイツ国債の利回り差(スプレッド)は27日、80ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と4月以来の大きさに拡大した。フランス10年債利回りは一時3bp上昇の3.53%をつけ、ユーロ圏で最も高い水準にある。

仮にバイル氏が退陣に追い込まれた場合、マクロン氏は新たな首相を任命し、十分な支持がなくても辛うじて政権を維持する可能性に賭けることはできる。また、議会を解散して再び選挙を行うことも可能だ。だが、新たな選挙は、2024年の選挙同様に、すでに下院で弱い立場にある大統領の力をさらに損なう恐れがある。
マクロン氏がどの道を選んでも、その結果が経済の長期的な停滞につながれば、税収を圧迫し、財政再建の課題はさらに厳しくなる。また、企業や労働者への減税を含む親企業的な改革を通じてフランスの財政問題に取り組み、経済成長率を高めるというマクロン氏の長年の戦略に、改めて打撃となる危険もある。
原題:French Political Crisis Dashes Hope of Business-Led Recovery (2)(抜粋)
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