虐待に通報義務も…証言や匿名通報のみでは調査が難しい現状

TBS報道局 調査報道部 樫田小夜 記者:
2025年10月から改正児童福祉法などが施行され、保育施設・幼稚園などでの保育虐待を発見した場合、通報が義務化されます。

これまでも児童養護施設の職員などには義務化されていましたが、保育施設に関しては初めて義務化されることになります。

出水麻衣キャスター:
この義務はどこまで拘束力があるのでしょうか。

TBS報道局 調査報道部 樫田小夜 記者:
罰則はなく、とにかく保育虐待を発見したら速やかに通報するものになります。

井上貴博キャスター:
ようやく法律上で機運を醸成するものができたということですね。

TBS報道局 調査報道部 樫田小夜 記者:
通報を積極的に集めて、保育の安全な環境を整えていくことが目的になっています。

井上キャスター:
取材をするなかで、どのような課題を感じていますか。

TBS報道局 調査報道部 樫田小夜 記者:
どちらかというと、課題のほうが多く感じています。

これまで取材をしてきたなかでは、自治体側に適切に通報したのにもかかわらず、「証言だけでは対応が難しい」と言われてしまったという方がいました。

また、狭い職場だと実名での通報はとても勇気がいると思いますが、「匿名の通報だと調査が難しい」と言われてしまったという方もいました。

自治体側を取材していると、やはり日々の保育対応や待機児童対策で手一杯で、調査にかける時間や人手が足りないといった実情を話す人が多いです。

増田明美さん:
自治体側というのは、小学校であれば教育委員会にあたるのでしょうが、保育の場合はどこが担当しているのでしょうか。

TBS報道局 調査報道部 樫田小夜 記者:
保育の受け入れなど、保育全般を担当しているところが調査もしていることが一般的です。

増田明美さん:
自治体によってもその環境は違うでしょうね。

証拠が必要というのは、監視カメラなどで撮るということなのでしょうか。

TBS報道局 調査報道部 樫田小夜 記者:
保育所にカメラなどがあれば証拠がある場合も多いですが、今多く取材しているのは、たとえば保護者がやむを得ず音声を録れるものを子どもに持たせるというような事例です。

今回の船橋の事例も、たまたま誰かが匿名でその様子を撮影していて証拠があったという状況です。

井上キャスター:
証拠がないと話が進まないということになると、個人的にはカメラの設置などは進むといいなと思いますが、そのコストをどうするのかという課題があります。

教育現場でも同じことが言えますが、子どもたちは被害を自分で訴えることができないなかで、第三者の目をどう入れるかという課題は、コストの面でも人手不足の面でも、解消できないものかと思います。

TBS報道局 調査報道部 樫田小夜 記者:
今、保育虐待を積極的に調査して認定していこうという動きが自治体側の認識として低いと思います。それは人手不足でできないというのもありますし、どうやればいいのかわからないというような声もよく聞きます。

今度、通報制度の義務化に合わせて、国が対応ガイドラインの改定をする予定です。そこでは積極的に虐待を認識・調査し、ダメなものはダメだと認定しながら、しっかりと子どものために対策を立てていこうという作業が今も進められています。

自治体としても積極的にまず調査に取り組み、通報してくる人たちの声を真摯に聞いて、通報しやすい環境作りかつ、通報の内容を真摯に受け止めて調査するという姿勢を打ち出すことが大事だと思います。

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<プロフィール>
樫田小夜
TBS報道局 調査報道部・記者
子どもの虐待・性被害などを取材

増田明美さん
スポーツジャーナリストとして「細かすぎる解説」が話題に
ロサンゼルス五輪 マラソン日本代表