一部の年金基金は厳しい現実に目覚めつつある。それは、株式市場をけん引するテクノロジー株の上昇に取り残されているというものだ。

こうした投資家は、エヌビディア株やマイクロソフト株など最近最高値を更新した銘柄の投資比率が不足していることを認識している。背景には、割高と見なされるテクノロジー株を避け、他の投資機会を探るアクティブ運用者の存在がある。

年金勢は足元で投資姿勢を見直し、投資比率の不足を補う「補完ポートフォリオ」と呼ばれるカスタマイズされた戦略に活路を見いだしつつある。パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)、ラッセル・インベストメント、オーストラリアのクイーンズランド・インベストメントなどは、需要が高まっているとして、このサービスを提供している。

ラッセル・インベストメントのカスタマイズド・ポートフォリオ・ソリューションズ共同責任者、ニック・ジルコウスキー氏は「過去1年半で、新規の補完ポートフォリオを採用する顧客が顕著に増えている」と話す。

市場のパフォーマンスが一部銘柄に集中する中、機関投資家は従来の慎重な姿勢を見直さなければ、市場の動きに一段と後れを取るリスクにさらされている。ハイテク7社で構成する「マグニフィセントセブン」銘柄がS&P500種株価指数に占める割合は今や30%余りに上る。10年前は10%にとどまっていた。

補完ポートフォリオでは、年金基金が複数のマネジャーによる運用資産を集約し、全体のポートフォリオについてベンチマーク対比で不足が生じている部分を測定。デリバティブ(金融派生商品)や複数銘柄の組み合わせによって不足分を補う。リターン追求ではなく、市場から乖離(かいり)し過ぎるリスクを抑えるのが目的だ。

メルボルンに拠点を置くマーサー・スーパーアニュエーション・オーストラリアは、前年度のようなパフォーマンス低下を避けるため、補完ポートフォリオを導入。740億豪ドル(約7兆100億円)を管理する最高投資責任者(CIO)のグレアム・ミラー氏は、「アクティブなグローバル株式の運用者全体を見渡すと、大多数が米大型テクノロジー株に関して大きくアンダーウエートの状態にある」と指摘した。

もっとも、こうした戦略が万能というわけではない。運用資産3880億豪ドルの豪最大の年金基金オーストラリアンスーパーも、補完ポートフォリオを取り入れている。だが依然として、昨年のリターン低迷について、外部委託先のファンドにおける米大手テック株のアンダーウエートが原因だと説明している。

原題:Pension Funds Missing Tech Rally Turn to Completion Portfolios(抜粋)

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