朝日生命保険は国内金利の上昇を受けて、2025年度当初に計画していた外債投資を円債に振り向けており、円債の残高が増加に転じている。内村伸明資産運用企画部長が20日のインタビューで明らかにした。

同社は外債残高を1000億円積み増す予定だったが、このうち500億円を円債に回した。円債残高は450億円削減する計画だった。内村氏は「円金利は超長期債を含め一定程度妙味のある水準で、日本銀行の金融政策正常化や財政に対する懸念からさらに上昇する可能性もある」と指摘。年度下期も金利が上昇すれば「外債から円債への入れ替えを考えていきたい」と述べた。

19日に行われた20年利付国債入札はやや弱めの結果となり、債券の売り(金利上昇)要因となった。年内に日銀の利上げが見込まれていることに加え、政局が不安定化して財政拡張による国債発行圧力が高まるリスクが意識されている。規制対応の買いが一巡して積極的な国債購入を控える生命保険会社が多い中、一部の生保は足元の金利上昇を好機として国債投資を進めている。

日銀の利上げは早ければ10月を想定。米国の利下げは9月から開始し年内2回を見込む。スワップ市場が織り込む9月の米利下げ確率は8割台半ばで推移している。日銀の利上げは10月までが4割台、年内は7割強の確率で織り込んでいる。

朝日生命は年度内の国内金利について、10年が1-2%、30年が2.2-3.5%という想定レンジは変えてないが、年度末は当初想定(それぞれ1.6%、3%)を上回る可能性があるとみる。新発30年債利回りは19日時点で3.14%。

内村氏は超長期債について、日銀の国債買い入れ減額ペースの見直しや財務省の発行減額により「以前より落ち着いたが、需給不安は変わらない」と話した。

減損リスク

金利の上昇により、朝日生命の円債の含み損は6月末に3989億円と3月末(3500億円)から増加した。保有債券の時価が取得価格の50%を下回って回復の見込みがない場合、評価差額を有価証券評価損として計上する減損処理が会計基準で定められている。

内村氏は、円債は基本的に資産と負債のデュレーション(平均残存期間)を合わせる「責任準備金対応債券」に区分しているため、会計ルールの概念に合わせて会計士とも相談し、含み損がなくなるまで保有する「減損非適用」扱いにしていると語る。

金利上昇による含み損拡大を受けて、大手生保の間では低利回り債を売って高利回り債を買う「入れ替え」が盛んだ。内村氏は「デュレーションの調整以外の目的による入れ替えは基本的に行っておらず、足元で特段、運用の制約にはなっていない」と述べた。

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.