欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、ユーロ圏の経済成長が今四半期に鈍化する可能性が高いとの見方を示した。米国との貿易合意により不透明感がある程度は和らいだものの、世界貿易を巡る先行きには依然として不確実性が残っていると指摘した。

ラガルド氏は20日ジュネーブでの講演で、欧州からの輸出品に対する15%の関税について、6月時点でECBが想定していた水準をやや上回っているが、同時に想定した深刻なシナリオと比べれば「はるかに低い」と語った。

「最近の貿易合意により不透明感はある程度緩和されたものの、予測困難な政策環境が続く中で、完全に払拭(ふっしょく)されたわけではない」とし、「医薬品や半導体といった特定分野に対する関税の扱いが依然不明確であるため、不確実性は続いている」と指摘した。

欧州連合(EU)がトランプ米大統領との貿易合意に達して以降で初の発言だった。ECBは9月の会合で、中銀預金金利を現行の2%に据え置くとみられている。

多くのECB当局者は、現在の金利水準が景気を過度に抑制も刺激もしていない適切な水準にあるとの認識を示している。ただ、追加利下げを完全に排除すべきではないとの声もある。

ラガルド氏は「ECBスタッフは、EUと米国の貿易合意がユーロ圏経済に与える影響を9月の経済見通しに織り込む。その見通しが今後数カ月の政策判断の指針になる」と述べた。

ユーロ圏経済は4-6月(第2四半期)に予想外の0.1%成長を記録した。インフレ率もECBの目標である2%前後で推移している。

ラガルド氏は「ユーロ圏経済は今年、厳しい世界情勢の中でも底堅さを示した」と述べた。

原題:Lagarde Sees Slower Growth With Some Trade Uncertainty Lingering(抜粋)

--取材協力:Bastian Benrath-Wright.

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