20日の日本市場では株式が大幅に下落した。米ハイテク株安を契機に過熱感を懸念した売り注文がソフトバンクグループといった銘柄に先行した。円は上昇して債券は下落(金利は上昇)。

日経平均株価の下落幅は一時800円を超えた。アドバンテストやフジクラといった相場をけん引していた人工知能(AI)関連株が安い。米国市場でAI関連のエヌビディアの下げが大きく、高値警戒感が出ていた日本株の売り要因になった。株安によるリスクセンチメント悪化で円が買われ、金利は上昇した。

パウエルFRB議長

21日からのジャクソンホール会合(米カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム)を前に金融市場では手控えムードが強い。会合はパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演が焦点。トランプ政権から利下げ圧力を受ける中での金融政策についての発言を市場参加者は待っている。

大和証券の山本賢治チーフエコノミストは20日付リポートでFRB議長講演について「次回9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の『慎重な利下げ』を再開する、という基本的なシナリオと一致するメッセージを出す」と予想した。

株式

株式市場は大幅続落。米国でAI関連株が過熱懸念から下落した流れを受け、国内でもハイテク株が値下がりして相場の重荷になった。

ソフトバンクGは一時9%超下落、日経平均銘柄で下落率上位に入った。三井金属を含む非鉄金属も軟調。

みずほ証券の三浦豊シニアテクニカルアナリストは、米国株ではハイテクやAI関連株がこれまで大きな上昇を見せてきたため、利益確定の動きが出るのは当然で日本市場にも波及していると述べた。特にジャクソンホール会合を前に投資家が利益を確保する動きが強まり、直近の上昇が目立ったハイテク株は影響を受けやすいとした。

ソフトバンクG株については、過熱感のあるバリュエーションへの懸念が売りにつながっているとバンエックでクロスアセット・ストラテジストを務めるアンナ・ウー氏(シドニー在勤)が指摘した。

食品や銀行、陸運といった内需関連株は値上がりが目立った。オリエンタルランドは4.5%高で取引を終えた。

為替

円相場は1ドル=147円台前半に上昇。米ハイテク株の下落を受けて日経平均株価が下げ、リスクセンチメント悪化による円買いが優勢だ。

みなと銀行の苅谷将吾ストラテジストはドル・円について、株式の現物が下げて海外時間に入るところでポジション調整の円買いが入ったようだと指摘。ドル・円が147円台を割れると一段と円高が進み、147円台前半をキープしたままだとレンジのまま、パウエルFRBの講演を迎えることになりそうだとした。

ジャクソンホール会合では22日にパウエルFRB議長が基調講演する。金利スワップ市場の9月の米利下げ織り込みは現時点で80%強。

東海東京インテリジェンス・ラボの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは「パウエル議長は雇用統計を受けて25bp利下げの確度が上がったと話すだろうが、継続利下げは否定する」と予想。市場の一部では50bpの利下げも意識されているため、議長発言がそこまでハト派でないとの見方になると米株が売られ、金利が上昇する可能性があると述べた。

債券

債券相場は下落、金利は上昇した。日本銀行の国債買い切りオペの結果発表後、午後に売りが優勢になった。

新発10年債利回りは1.605%まで上昇し、7月に付けた2008年以来の高水準に並んだ。超長期の20年、30年債利回りも上昇した。

SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、日銀オペの結果に加えて、日本証券業協会が発表した公社債売買高で外国人投資家が7月に売り越していたことも材料視された可能性があると述べた。

しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは超長期債について「財政リスクが意識されている」と指摘した。国民民主党の玉木雄一郎代表らが、来年の通常国会で消費税やガソリンの暫定税率廃止などを掲げており、従来よりも成立する可能性が高まっていることが背景にあるとみていた。

新発国債利回り(午後3時時点)

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