ロシア2位の銀行、VTBは貸出収入の悪化が続くとみている。ウクライナ侵攻の継続でロシア経済が圧迫される中で、同行の安定性に対する懸念を強めそうだ。

VTBが7月31日に発表した今年上期(1-6月)の純金利収入は前年同期比49%減の1468億ルーブル(約2725億円)で、中核事業の貸付業務が再び落ち込んだ。

モスクワGUM百貨店内にあるVTBの支店

世界の大手銀行で、純金利収入がこれだけ大きく落ち込むのはまれだ。さらに同行の幹部は内々に、決算発表の数字は事態の本当の深刻さを反映していないと示唆していると、非公表の問題だとして匿名を要請した関係者は語った。

ロシアのプーチン大統領はウクライナでの戦争を終わらせる取引を結ぼうと、週内にアラスカで開かれるトランプ米大統領との会談を準備しているが、VTBの貸出収入急減はロシア経済が直面する問題を浮き彫りにする。米国はロシア産原油購入を理由に対インド関税を2倍に引き上げるなど、ロシアに対する圧力を強めている。

 

純金利収入は、銀行が貸し出しによって得る金利収入から預金に支払う利息を引いたものだ。今年上期の一時期には中銀の政策金利がピークの21%にあり、これがVTBのポートフォリオを圧迫し、純金利収入を急減させた。

ただし、決算によれば、同期にVTBはなお2800億ルーブルの純利益を計上している。金融商品のトレーディングで大きな利益を上げたとされたが、こうした利益は長期的に頼れる収益源ではない場合が多い。

VTBの広報担当者は純金利収入の減少について、金利が7.5%から21%に引き上げられたことが「大きく、純金利収入への影響が尾を引いた」と説明。

同行幹部が決算の数字は本当の深刻さを反映していないと内々に示唆しているとの指摘は、「作り話」と質問状に対する電子メールで否定した。

実態把握は困難

ロシア政府は戦争費用の調達で、VTBなどの国営銀行に大きく依存している。政府は銀行に対し、軍需関連業界への優遇融資を義務づけているが、戦争関連支出のデータは公表が制限されているため、公式統計で実態の把握は困難だ。

VTBはロシア中銀がシステム的に重要と見なす銀行の一つ。現・元関係者の話やブルームバーグが確認した文書によると、同行の一部幹部は私的な会話で純金利収入の急減に触れ、ポートフォリオの悪化は公の指標が示唆するよりも深刻だと懸念を表明している。

VTBが発表した公式のデータでは、6月末時点の不良債権比率は4.1%と、前年同期に比べ1ポイント上昇。個人による支払い滞納は年初から32%増えた。これらは比較的急速な増加で、同行が問題を抱えていることを示唆するが、2017年に中銀が資金を注入して銀行業界を救済した時と比べると、比率はまだ低い。

原題:Russia’s VTB Bank Sees Lending Income Collapse Amid War Pressure(抜粋)

--取材協力:Tom Metcalf.

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