北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は、今週の米ロ首脳会談がウクライナの領土を巡る交渉への道を開く可能性があると述べた。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領はロシアに占拠された領土の放棄を引き続き拒否している。

トランプ米大統領は8日、ロシアのプーチン大統領と15日にアラスカで会談すると発表した。ワシントンとモスクワの協議に詳しい関係者によれば、交渉団はロシアが軍事侵攻で占領した領土の支配を確定させる内容の合意に向けて詰めの作業を進めているという。

これに対し、ゼレンスキー氏は戦争を終結させるために領土を譲渡することはないと表明した。

こうした中、ウクライナの「領土一体性」に繰り返しコミットしてきた欧州各国の首脳らは、米ロ首脳会談前にトランプ氏と協議することを模索していると、事情に詳しい関係者は明かした。

北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長

ルッテ氏は10日、ABCの番組「ジス・ウィーク」で、和平プロセスが前進する場合、領土問題はウクライナに対する安全保障上の保証と並んで「議題に上らなければならない」と指摘。ウクライナが一部領土の支配を事実上失っている現状を認める形になる可能性があるが、主権を正式に放棄するわけではないとの見方を示した。

ルッテ氏は「この領土の問題に関して、将来の合意でロシアが事実上ウクライナの一部を支配していることを認める場合、それは政治的・法的な承認ではなく、事実としての認識でなければならない」と語った。

欧州連合(EU)外相らは11日に臨時のオンライン会合を開催し、ウクライナ問題の今後の対応を協議する予定だ。

EUのカラス外交安全保障上級代表は声明で「国際法は明確だ。一時的に占拠された全ての領土はウクライナのものだ」とし、「持続可能な平和とは、侵略が報われるものであってはならない」と強調した。

ルッテ氏はまた、ゼレンスキー氏がアラスカでの会談に出席しない場合でも、詳細な和平交渉には関与すべきだと主張。CBSの番組「フェイス・ザ・ネーション」で「15日の会談では、プーチン氏がどれほど真剣なのかを見極めることが重要だ。それができるのはトランプ大統領だけだ」と語った。

EUのカラス外交安全保障上級代表

原題:NATO Chief Sees Ukraine’s Land in Play as Trump Meets Putin (1)、European Leaders Want to Speak to Trump Before He Meets Putin(抜粋)

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