(ブルームバーグ):米国が日本から輸入する品目に対する15%の一律関税が7日、発動する。巨額の対米投資などと引き換えに予定されていた税率の引き下げで合意したが、米国が問題視する貿易赤字が縮小しなければ摩擦が再燃しかねない。
日本側は5500億ドル(約82兆円)の対米投資に加えて、ボーイング製の航空機100機購入などを約束した一方、一律関税と自動車関税の引き下げに成功した。半導体や医薬品への分野別関税での「最恵国待遇」も勝ち取った。
日本が先鞭(せんべん)をつけた「関税率と対米投資のパッケージ」というひな形は、欧州連合(EU)や韓国による米国との協議でも踏襲された。EUは「15%・6000億ドル」、韓国は「15%・3500億ドル」で妥結した。
各国による米国との合意で、市場心理や企業活動の改善につながる可能性がある。世界経済を取り巻く不確実性は引き続き高いものの、日本銀行は7月の展望リポートで日米合意に触れた上で「前向きな動き」と進展を評価した。
加藤勝信財務相も1日の閣議後会見で、日米間に加えてEUとも合意に至ったことで、米通商政策に関する不確実性や、日本や世界経済を下押しするリスクを「低下させるものと考えている」と述べた。

ただ、火種は残っている。トランプ大統領の関心事は貿易赤字の縮小で、関税はその手段に過ぎない。事情に詳しい複数の関係者によると、今回の日米協議では貿易赤字の縮小に対する誓約は求められなかったが、赤字幅が減少しなければ大統領のいら立ちを誘発する恐れもある。
実際、ベッセント財務長官は米国が合意内容の履行状況を四半期ごとに精査し、大統領が満足しなければ関税率を25%に戻すと述べた。国内では野党などから、正式な合意文書がないことを不安視する声も出ている。
日本貿易振興機構(JETRO)によると、米国の対日貿易赤字は2024年に687億ドルに上る。前年と比べ31億ドル縮小した。
一律関税は、米国が各国に基本税率10%をかけた上で、貿易相手国ごとにさらなる税率を上乗せする仕組みだ。対日関税は当初計24%で発動されたが、直後に上乗せ分を停止し、一時的に税率は10%に戻った。その後、米国は8月1日に25%の関税を賦課すると発表し、日本側はその期日までに引き下げで合意できるか模索していた。
自動車関税
日米は自動車・同部品への関税も既存の税率と合わせて計15%に下げることで決着したが、適用日は明らかになっていない。
交渉を担当する赤沢亮正経済再生担当相は1日の記者会見で、米側に対し、「合意を履行するための措置を速やかに取るように求めていきたい」と語った。
また、当初通告された水準より低いとはいえ一律15%が適用される関税措置は日本経済を直接的・間接的に下押すと指摘。米国市場での企業の販売戦略によって国内総生産(GDP)への影響も変化するとして、まずは輸出価格や輸出量の動向を注視すると述べた。
(加藤財務相、赤沢経済再生相の発言を追加し、更新しました)
--取材協力:照喜納明美.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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