(ブルームバーグ):ドルは7月、今年に入って最も高い月間騰落率で今月の取引を終えることになる。堅調な米経済と、トランプ米大統領による通商合意がドル買いにつながっている。
ブルームバーグ・ドル・スポット指数は7月に2.5%ほど上昇。トランプ氏が政権2期目を開始した1月から月間ベースの騰落率はマイナスが続いていたが、ようやくプラスに浮上した。
30日に発表された4-6月(第2四半期)の米国内総生産(GDP)速報値は前期比年率3%増と、貿易政策が目まぐるしく変わる中で底堅さを示した。
パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が同日の連邦公開市場委員会(FOMC)終了後に行った会見を受け、市場では9月の利下げ観測が後退。ドル指数は押し上げられた。
ドル指数は31日を含めて6営業日続伸。年初来の下落率は7%未満に縮小した。
マニュライフ・インベストメント・マネジメントのシニアポートフォリオマネジャー、ネイサン・スフト氏は「ドルはかなり軟調だったが、米経済データの底堅さや関税交渉の進展、売り一巡感を背景に一定の買いを集めている」と述べた。

31日の朝方に発表された米個人消費支出(PCE)コア価格指数は前年同月比の伸びが市場予想を上回り、インフレ抑制の進展が限定的であることが示された。これを受け、ドル指数はこの日の高値を付けた。
金利スワップ市場では、9月のFOMC会合での利下げ確率が40%にとどまり、10月は80%と織り込まれている。
今年のドル指数は記録的な下落基調が続き、足元の反発は、たとえ短期間で終わったとしてもその転換を示す。
トランプ大統領が仕掛けた貿易戦争や度重なる方針転換で経済が混乱し、基軸通貨としてのドルの地位が損なわれた。大型減税法の成立に伴い、米財政赤字が膨らむとの懸念もその流れに拍車を掛けた。
米国以外の投資家がドル一段安を警戒してヘッジを急いだことも、ドルの急落につながっていた。スタンダードチャータードのディエゴ・デジョルジ最高財務責任者(CFO)は31日の早い時間帯に行ったインタビューで、同行の大手法人顧客と個人の富裕層の多くが、一段のドル安に備えて4-6月(第2四半期)にヘッジをかけたと説明した。

マクロ・ハイブの為替ストラテジスト、ベン・フォード氏は「通貨バスケットに対してドルを引き続きショートにするには、トランプ氏による何らかの劇的な材料、もしくは米国を中心とした景気減速が必要になるだろう」と述べた。
ドルがユーロや円など他通貨に対して上昇しているもう一つの要因として、トランプ氏が米国に有利な貿易合意を勝ち取っていることがある。
7月は円やポンドの対ドルでの下げが大きかった。ユーロの下落率は3%ほどに達した。
ベテラン為替トレーダーで、スペクトラマーケッツの社長であるブレント・ドネリー氏は「通商合意の詳細をどう分析しても、欧州にとって厄介な内容にみえる」と指摘した。
原題:Dollar Wraps Up Best Month of Trump’s Term as Economy Holds Up(抜粋)
--取材協力:Carter Johnson、George Lei、Michael G Wilson、James Hirai、Harry Wilson.
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