（ブルームバーグ）：トランプ米大統領は29日、スコットランド東部アバディーンで、自身の広大なゴルフ場の２つ目のコース開業を祝った。スターマー英首相との会談や欧州連合（ＥＵ）との貿易協定の締結を経て、トランプ氏は、自らの有名な資産の一つを大々的に宣伝した。

トランプ氏は、ゴルフ場「トランプ・インターナショナル・スコットランド」１番ホールのティー付近で約６分間スピーチし、「この地域の皆さんは、私たちを本当によく受け入れてくれた」と来場者に語りかけた。

さらに「きょうこのコースでプレーするのが楽しみだ。プレー後すぐ、ワシントンに戻る。私たちは今、ゴルフよりももっと重要な、５つほどの戦争を止めたばかりだ」と大統領としての職務にも言及した。

その後、ドライバーでティーショットを放った後、トランプ氏は長男のエリック氏、元プロゴルファーのポール・マッギンリー氏、リッチ・ビーム氏とともに、コース初の公式ラウンドに臨んだ。

公私混同

この出来事は、トランプ氏が大統領職と家族のビジネスを混同してきた姿勢を如実に示す例だ。トランプ氏はこれまでにも、フロリダ州の私邸「マールアラーゴ」で資金集めや記者会見を開催したり、所有するニュージャージー州やバージニア州のゴルフ場で、サウジアラビアの政府系投資ファンドが資金提供するＬＩＶゴルフトーナメントを主催したりと、公的立場と私的利益の境界を曖昧にしてきた。

トランプ氏が所有するターンベリー、アバディーンのゴルフ場のショップには、コースのブランドロゴ入りのウエアと共に、同氏の選挙スローガン「米国を再び偉大に（Make America Great Again）」の帽子が並ぶ。29日のイベントでは、マイケル・ジャクソンの「スリラー」やヴィレッジ・ピープルの「ＹＭＣＡ」など選挙活動時に使われた楽曲がスピーカーから流れ、赤・白・青の花火がフェアウェーから打ち上げられた。

29日のイベントは、米国民の税金で賄われた５日間のスコットランド私的訪問の締めくくりとして行われた。ホワイトハウス当局者は、今回の訪問が利益相反にあたるとの指摘を否定している。トランプ氏は大統領に就任した際、自身の企業の経営権を手放し、資産を子どもたちが管理する信託に移したが、倫理団体はそれでも利益相反の懸念は解消されないと指摘している。

イベントの来場予定者には、スコットランドのスウィニー首相、スティーブンス駐英米国大使、ＤＰワールドツアーのガイ・キニングス最高経営責任者（ＣＥＯ）、元サッカー選手のロビー・ファウラー氏とアンドリー・シェフチェンコ氏、さらに全米オープン優勝経験者のマイケル・キャンベル氏といった、多彩な著名人が名を連ねていた。

トランプ氏は、英国にある自身の２つのゴルフ場の視察を、スコットランド訪問の表向きの目的としていた。だが、到着後は、ＥＵの執行機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長と会談し、ＥＵに課す関税を15％に引き下げることで合意した。スターマー氏とは、パレスチナ自治区ガザの人道危機やウクライナでの戦争、貿易を巡り協議した。

トランプ政権は現在、国内でもさまざまな課題に直面している。性犯罪者として有罪判決を受けたジェフリー・エプスタイン被告（故人）に関連する記録の開示を求めたことで批判を受けているほか、政策金利や連邦準備制度理事会（ＦＲＢ）の本部改修を巡るパウエル議長との対立も長期化し、トランプ氏による関税の発動期限も８月１日に迫っている。

地元の反発

新設ゴルフコースは、トランプ氏の母メアリー・アン・マクラウドさんにちなんで命名される予定だ。スコットランドを出生地とするメアリーさんはゲール語を話し、ルイス島のストーノーウェイから10代で米国に移住したという。

スコットランドに高級ゴルフコースをもう18ホール追加したところで、トランプ氏が地元民の好感を得られるとは限らない。大半の住民は数百ポンドも払ってゴルフをすることには関心がないからだ。

当初計画で約束された雇用数は実現せず、移転を拒んだ地元住民には、トランプ氏が強硬な対応を取った。さらに、周辺の砂丘が「特別科学関心地区」の指定を失ったことで、環境保護団体からは激しい反発を招いた。トランプ氏は2012年、エディンバラのスコットランド議会に登場し、自身のゴルフ場からの景観を損ねるとして、風力発電所の建設阻止を試みた。

スコットランド東海岸には、ミュアフィールドなどの全英オープン開催地から、セント・アンドリュース、ロイヤル・ドーノックといった「死ぬまでに一度は訪れたい」名門コースが集まる。他の高級施設も刷新を進めており、カーヌスティではホテルの改修が行われ、キャボット・ハイランズでは新たなコースの追加が計画されている。トランプ・インターナショナルの拡張で、この地の一流ゴルフ場のリストに、新たな項目が加わることになる。

原題：Trump Opens Golf Course During Not So Private Scottish Visit（抜粋）

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