スターマー英首相に対し、速やかにパレスチナを国家として承認するよう求める声が閣内から相次いでいる。パレスチナ自治区ガザの人道危機が深刻化し、イスラエルへの圧力も強まっている。フランスのマクロン大統領は9月の国連総会でパレスチナを国家承認すると表明した。

事情に詳しい複数の関係者によると、スターマー首相がパレスチナの国家承認を巡る公約をいまだに実行しないことに、一部の閣僚が不満を募らせている。ストリーティング保健・社会福祉相やマフムード法相、ベン北アイルランド相、ナンディ文化・メディア・スポーツ相らは最近、スターマー首相とラミー外相に迅速な対応を促したという。

パレスチナを国家として共に承認するようスターマー氏に働きかけてきたマクロン大統領は24日、国連総会でパレスチナを承認すると発表。スターマー氏に対する圧力はさらに強まっている。

マクロン氏はソーシャルメディアへの投稿で、「中東における公正で持続的な和平への歴史的なコミットメントに基づき、フランスはパレスチナ国家を承認すると決定した」と表明。正式発表については、ニューヨークで開かれる国連総会に合わせて行うと付け加えた。

スターマー首相は24日、「国家としての地位はパレスチナ人の譲ることのできない権利だ」と指摘。停戦が実現すれば、英国による承認に道が開かれると述べたが、具体的な時期には言及しなかった。

ガザの停戦交渉は24日、米国とイスラエルが交渉チームを引き揚げたことで物別れに終わった。数週間前にはトランプ米大統領は合意が近いと述べていた。

欧州連合(EU)はわずか2週間前、ガザへの食料供給の拡大を図ることでイスラエルと合意に至ったが、広範な飢餓が現地で発生しているとの報道を受け、英政権内の緊張はさらに高まっている。やせ細った乳児や、スープの配給で長い列に並ぶ子どもたちの姿が相次いで伝えられている。

イスラエル政府はこうした状況について、イスラム組織ハマスに責任があると主張。一方、国境なき医師団や多くの人道支援団体はイスラエルが取り決めを履行していないと非難している。ハマスが2023年10月にイスラエルを奇襲し始まったガザでの戦闘以降、ネタニヤフ首相率いるイスラエル政府はパレスチナ国家の樹立に反対し、強硬な姿勢を強めており、安全保障上の脅威になると主張している。

だが、イスラエルのガザ侵攻によって推計5万9000人余りが死亡し、広い範囲ががれきと化したことで、欧州ではイスラエルを支持してきた国の一部に変化が生じている。戦闘の早期終結を促すため、貿易制裁の可能性を検討する動きもある。英国はイスラエルへの武器輸出を一部停止し、ネタニヤフ政権の幹部に制裁を科している。

遅過ぎる

労働党内では、仮に9月の国連総会で英国がパレスチナを承認したとしても、それでは遅過ぎるかもしれないと懸念する声も出ている。

ストリーティング保健相は22日、所管外の外交問題について異例の発言を行い、下院で「パレスチナ国家として認められるものがまだ残っているうちに」承認が実現すると期待していると述べた。

閣内の不満に関しては英紙ガーディアンが最初に報じていた。

複数の労働党議員が速やかな対応を求めたことを受け、ラミー外相は今週、下院で「承認を巡る議論は承知しており、適切な時期にそこへと進む必要がある」としながらも、「率直に言って、現時点で承認しても現地の状況は変わらない」との見方を示した。

原題:UK Cabinet Pushes Starmer to Hasten Backing of Palestinian State、Macron Says France to Recognize Palestine State in September (1)(抜粋)

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