関西電力が美浜原子力発電所(福井県美浜町)1号機の後継機設置検討に向けた調査を始めると、22日に発表した。2011年に起きた福島第一原子力発電所の事故以来見合わせていた調査が再開することになる。

関電の資料によると、調査を通じて新規制基準への適合性の観点で地形や地質などの特性を把握し、後継機設置の可能性有無について検討する。革新軽水炉の開発状況や規制の方針、事業環境整備の状況も加味して判断するとしている。同発電所では現在1基が稼働中で、2基が廃炉作業中だ。

同社の森望社長が午後1時から記者会見を開いて計画について説明し、資源が乏しい日本において、安全を大前提に安定供給や経済効率性なども鑑みると、原発は「必要不可欠」だとの見解を示した。ただ、新設の判断タイミングや費用を現時点で見積もるのは難しいとした。

同社は昨年11月、公募増資を実施して約3794億円調達した。このときの公募増資について森氏は、個別案件を意図したものではなく、送配電事業の変革に充てるものとした上で、今回の原発新設も「広い意味では包含されている」とコメントした。

見直し機運

福島第一原発の事故から10年以上を経て原発の新設計画が実現すれば、日本のエネルギー政策にとって最も重要な一歩を踏み出すことになる。政府はAI(人工知能)ブームによる今後の電力需要の増加に対応するため、原発の活用を後押ししている。

原発による電力確保を急ぐ動きは各国で相次いでいる。米マイクロソフトは、閉鎖されたスリーマイル島原発の再稼働で生み出される電力を購入する契約を交わし、アマゾン・ドット・コムは次世代原子炉技術を持つ企業への投資を進める。欧州では、ベルギーがエネルギー供給問題に対応するため、最新の発電所2基の閉鎖を延期した。

武藤容治経済産業相は22日の閣議後会見で、原発の再稼働や新設については「安全性、地域の理解を大前提に対応を進めていく必要がある」と話した。

関電株は連休明けの東京市場で続伸し、一時前営業日比5%高の1802.5円と、4月10日以来の日中上昇率だった。日本経済新聞が18日、関電が美浜原発での新設に向けた地質調査を開始する計画だと報じたことが材料視された。

株式市場では東京電力ホールディングスや北海道電力、関西電力などで加圧水型軽水炉の採用実績がある三菱重工株も買われた。

(会見からの詳細を追加しました)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.