欧州連合(EU)加盟国は、ウクライナに軍事侵攻したロシアに対する新たな制裁パッケージを承認した。EUのカラス外交安全保障上級代表(外相)が明らかにした。石油価格上限引き下げや新たな銀行規制が盛り込まれ、スロバキアが拒否権を撤回したことで合意に至った。

ロシアの全面侵攻開始以後、EUが打ち出した制裁パッケージは18回目。国際銀行間通信協会(SWIFT)の国際決済ネットワークから、さらにロシアの銀行約20行を遮断し、取引を全体的に禁止する。第3国でロシア産原油から精製される石油製品にも制限を課し、ロシアの国営石油会社ロスネフチが出資するインドの大規模製油所も制裁対象とする。

天然ガスパイプライン「ノルドストリーム」についても、将来的に再稼働させないよう制裁が科される。

ロシア産原油の上限価格はこれまで1バレル=60ドルに設定していたが、今後は市場価格を15%下回る水準とする。ブルームバーグがこれまで報じた通り、まずは45-50ドルの水準で始まり、市場価格に基づき少なくとも年2回、自動的に調整される。

EUは10日、ウクライナ侵攻を続けるロシアに戦争終結を促す狙いから、ノルドストリームの禁止と、主要7カ国(G7)で原油価格の上限を1バレル=45ドルに引き下げることを提案していた。ロシアの化石燃料から脱却する上で救済措置を求めていたスロバキアが欧州委員会の保証を受け入れて反対を取り下げ、承認にこぎ着けた。

今回の制裁パッケージで、EUはロシアのエネルギー収入に一段と打撃を与えたい考え。ロシアは石油輸出の大半をインドと中国に対して行っている。

ただ、主要7カ国(G7)が課しているこれまでの価格上限は、ロシアの石油輸出に限定的な影響しか及ぼせていない。ロシアは大規模な「シャドーフリート(影の船団)」を組織し、西側のサービスを利用せずに輸送できる体制を取った。

今回の価格上限引き下げについて、EUは今のところ米国の支持を取り付けることができていない。事情に詳しい関係者によると、EUは欧州以外のG7メンバーと協議を続けているが、米国の反対が合意成立を難しくしている。英国はEUと足並みをそろえる見通しだと、関係者は述べた。

それでも、ロシア産原油から作られるディーゼルなどの燃料に対するEUの制限措置は、市場に一定の影響力を持つ可能性がある。欧州はディーゼルをインドから輸入しており、インドは大量のロシア産原油を購入している。欧州時間の18日朝方の取引では、ディーゼルは原油よりも上げ幅が大きく、ディーゼル相場には過去数週間にひっ迫の兆しが表れていた。

EUは18日中にブリュッセルで閣僚会合を開いて制裁パッケージを正式に採択する見通しだが、土壇場で修正が行われる可能性も依然ある。

このほか今回の措置では、ロシア産原油を輸送する影の船団の数十隻、これらのタンカーと取引している団体やトレーダーを制裁対象に追加。制裁対象とされたタンカーは、これで合計400隻を超えた。

さらに、戦争目的に使用し得るとしてロシアへの輸出を制限する品目を追加。EUによる貿易・エネルギー取引制限をロシアが回避するのを助けているとみられる中国など第3国の団体も制裁対象とした。

原題:EU Imposes New Raft of Sanctions on Russia and Its Oil Trade (3)(抜粋)

(第6-8段落を挿入し、背景説明を加えます。更新前の記事は第4段落の上限価格の設定水準を原文の訂正に基づき修正しています)

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