(ブルームバーグ):石破茂首相は18日午後、来日中のベッセント米財務長官と官邸で面会した。ベッセント氏は米国の関税措置を巡る日米協議に関し、必ず良い合意ができるとの認識を示したという。石破首相が終了後、記者団に明らかにした。
一方、ベッセント財務長官は首相との面会後、ソーシャルメディアのX(旧ツイッター)に投稿し「米国と日本の間で相互に利益となる貿易合意は依然として可能な域にある」との見解を示した。
「拙速な合意より、良い合意の方が重要だ」とも述べ、協議にはなお時間を要する可能性も示唆した。その上で「今後も正式な協議を継続できることを楽しみにしている」と記した。
面会には日本側で交渉を担当する赤沢亮正経済再生担当相が同席した。石破首相はベッセント氏に対し、双方との利益となる合意をまとめるよう、赤沢氏と「精力的に協議を続けてほしい」と伝えたという。トランプ大統領と会談する可能性について、「国益を背負って大統領と直接、お話しする機会は当然ある」とし、交渉の進捗(しんちょく)状況をみながら調整したい考えも示した。
ベッセント氏は大阪・関西万博の大統領代表団として来日した。日米協議に大きな進展が見られない中での首相との面会だった。20日投開票の参院選では自民、公明の連立与党の苦戦が報じられており、選挙後に政局が不安定化する恐れも、日米協議の不透明感を高めている。石破首相は赤沢氏による協議継続の意向を強調した。
朝日新聞(電子版)は、8回目となる日米関税交渉を行うため、赤沢氏が来週前半にも訪米する方向で調整していると報じた。
安全保障
石破首相は、発動が8月1日に迫っている日本への25%関税の扱いなど具体的な話はしなかったとしている。面会では安全保障面の課題についても協議した。石破首相は「わが国の平和と安全の確保に日本として主体的に取り組み、防衛力の強化に引き続いて取り組んでまいりたい」と伝達。「経済安全保障分野でも日米で連携すべき分野はたくさんある」ともベッセント氏に述べたという。
トランプ大統領は現地時間16日、対日関税は発表通り8月1日に発動されるとの認識を示した。赤沢氏は日本時間17日にラトニック商務長官と電話協議を行うなど合意の可能性を模索している。19日に万博会場で行われる米国のナショナルデー行事には赤沢氏が応対にあたる。
18日の面会後、赤沢氏は、あくまでもベッセント氏による来日の目的は万博だとした上で、関税交渉のことは「長官も私も常に頭の中にある」と記者団に語った。19日に関税交渉が話題に上ることも「あり得ると思う」と話した。
トランプ政権は、自動車・自動車部品に25%、鉄鋼・アルミニウム製品に50%など分野別の追加関税を既に課している。他の品目は輸入品に一律10%の基本税率を適用しているが、2国間交渉がまとまらない国に対しては8月1日以降、個別に税率を上乗せする方針だ。トランプ氏は銅に50%、医薬品に最大200%の分野別関税を課す可能性も示している。
(第6段落に赤沢氏の訪米日程に関する朝日新聞の報道を追加して更新します)
--取材協力:鈴木克依、塩原るみ.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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