(ブルームバーグ):生命保険協会は、「生保レディー」とも呼ばれる営業職員の呼称を一般から公募する。女性社員が多いことから定着してきた呼び名だが、性別にとらわれない職種イメージの創出と人材の多様化につなげたい考えだ。
生保協会の高田幸徳会長(住友生命保険社長)がブルームバーグとのインタビューで「女性だけのものであるという印象を変えていく必要がある。生保レディーという固定化されたイメージも改めたい」と述べた。男性の営業職員も徐々に増え、「男女の比率も変わってきている」として、新たな呼称で男女を意識しない職種としてのイメージ定着を目指す。
インターネット取引が広がる中でも、多くの生命保険会社が対面での商品販売やサポートを顧客獲得や契約維持のための重要な手段と位置付けている。生命保険の営業を担う「生命保険募集人」となるには、専門試験に合格した上で国への登録が必要。質の高いサービスを提供するためにも、性別にかかわらず優秀な人材確保は不可欠だ。
高田会長は18日の就任会見で、9月ごろから募集を始め、1万件の応募を目指す考えを示した。元々、生保レディーという呼称は同協会が使用してきたものではないが、国内メディアなどで使われ、世間一般に定着してきた。募集人は生命保険会社の社員のほか、代理店にも多く在籍している。
戦後の取り組みに由来
第二次世界大戦後、戦争で夫を亡くした女性に対して生命保険会社が職を提供してきた経緯があり、その流れを引き継いで生保の営業現場には女性が多いと高田会長は説明する。生保協会によると、2024年3月末時点での生命保険会社の営業職員の数は女性が約20万人に対して男性は約3万人と全体の1割強にとどまる。
最大手の日本生命保険では23年度に約6800人、24年度には約7600人の営業職員を採用したが、男性の採用者数はゼロだった。また、今年3月末時点での営業職員の在籍者数は4万7842人と1年前と比べて約100人減少し、離職者数が採用者数を上回っている状態だ。
一般的に生保の営業職員は一定の育成期間が過ぎると契約獲得数など実績によって報酬が決まる給与体系が取られている。こうした給与体系も大量の離職者を招く一因とみられ、定着率を安定させるために各社は賃上げなどを行ってきた。ただ、金融業界全体で人材の獲得競争は激しく、危機感は増している。
日本生命の朝日智司社長は今月2日に開催した総代会で、これまでの育成の仕方や定着率では将来にわたって持続可能な販売チャンネルの維持は難しいと指摘。「もう一段、特にフロントについては考えなくてはいけない」と語った。
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