(ブルームバーグ):次世代半導体の量産を目指すラピダスは18日、北海道千歳市で2ナノメートル(ナノは10億分の1)半導体の試作に成功したと発表した。世界的にも注目されるこの技術開発はラピダスにとって大きな一歩だが、2027年の量産に向けては依然として課題も残る。
技術的に難易度の高い試作を成功させた背景には、極端紫外線(EUV)露光装置の迅速な導入があった。小池淳義社長は記者会見で、昨年末の装置搬入から「わずか3カ月でEUVの露光が成功したのは世界に例がない」と振り返った。
小池社長によると、次世代の半導体プロセスを支える重要技術であるGAA(ゲートオールアラウンド)トランジスタの試作を行ってから、動作確認されたのは7月10日のことだった。今年度中にはチップ設計に必要なプロセス・デザイン・キット(PDK)を顧客に提供し、顧客が自社製品の設計を始めるための環境を整える。
一方で懸念も拭い切れない。試作品には未だ改良の余地が残り、トランジスタ性能や歩留まりの向上が必要になるためだ。
ここ数年、政府の後押しもあり、半導体業界には追い風が吹いてきた。政府が熊本県に誘致した半導体受託生産最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の第1工場は24年末に生産を始めた。22年設立のラピダスも、出資を含め累計1兆8000億円超の支援を受けている。
ただ足元では不透明感も漂い始めている。TSMCは否定しているが、熊本第2工場の建設が先送りされるのではないかという観測も浮上した。また東京商工リサーチによると、パワー半導体のファウンドリー(受託生産)を手がけるJSファンダリ(東京都港区)は14日に、東京地裁に破産を申請し、破産開始決定を受けた。
政府は、先端半導体の受託生産がTSMCに集中するのはリスクであり、2ナノ半導体の量産を目指すラピダスの存在はリスクを軽減する上で「意義がある」との見解を示して支援を続けている。だが、20日投開票の参院選で与党の立場が弱まるようなことになれば、同社の支援に対する議論が高まりかねない。
きょうの会見で東哲郎会長は、「単に10数年遅れた日本が最先端の技術に挑戦しているだけでなく、世界でもまれに見る異例のスピードでここまできていることに世界が非常に驚いている」として、工場の建設を担った鹿島や装置・材料メーカーなど関係者への感謝を述べた。
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