(ブルームバーグ):トランプ米大統領は、中国の習近平国家主席との首脳会談および同国との貿易合意を実現させるため、中国に対する挑戦的な姿勢を和らげている。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。
大統領2期目の就任から半年が経過し、トランプ氏は選挙戦中に強調していた巨額の対中貿易赤字やそれに伴う雇用喪失に関する過激な発言をトーンダウンさせている。こうした柔和な姿勢は、他の貿易相手に対して厳しい関税で経済を破壊させると脅しているのと対照的だ。
トランプ氏が今注力しているのは、1期目のような中国との貿易合意を取りまとめて短期的な勝利をアピールすることであり、貿易不均衡の根本原因に対応することではない。中国は輸出の好調を背景に、今年上半期に過去最大の貿易黒字を記録した。
トランプ氏は15日、「非常に友好的な形で」中国と闘うと述べた。関係者の一部によれば、トランプ氏はスタッフとの会合では、最も穏健な意見を持つことが多いという。
米政権高官らは、トランプ氏が習氏に対して個人的な好意を持ち続けていると強調しつつも、1期目には中国の華為技術(ファーウェイ)への広範な制裁措置や、中国からの輸入品の大半に関税を課すといった強硬策を実行したとも指摘する。
ただし、トランプ氏の流動的な戦略や強硬政策からの方針転換に対しては、政権内の政策担当者のみならず、政権外のアドバイザーからも懸念の声が上がっていると、関係者は話した。特に今週は、これまで米国が中国に対して設けてきた「譲れない一線」が、いまや交渉余地があるものに変化しつつあるとの不安が広がった。

人工知能(AI)向け半導体大手の米エヌビディアが、中国向けに開発した低性能チップ「H20」の販売再開を認められ、米国の最先端技術は中国の手に渡さないと表明してきた政権の方針を覆す格好となった。販売再開は検討されていないと、複数の高官がこれまで述べていた。
ベッセント財務長官は先月、上院での公聴会で、H20の規制を政権の対中強硬姿勢の証拠だと説明した。中国とのディールにおいてレアアース(希土類)と引き換えに、米国の先端半導体を差し出すのではないかと懸念する上院議員らに詰め寄られた。
こうした輸出には今後も許可の取得が義務付けられるが、一部のトランプ政権当局者は、中国のテクノロジー企業を利するだけだとして輸出許可の付与に反対してきたと関係者は述べた。バイデン前大統領はこうした制限を課していなかった。
一方で、エヌビディアがファーウェイと中国市場で直接競争することは、米中のAI覇権争いに勝つために不可欠だと主張する声もある。エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)が主導するこの見解が、政権内で支持を広げつつあると関係者は語った。
「生産的」な協議
貿易に関する最終決定権はすべてトランプ大統領にあると、ホワイトハウスの報道官はいう。「大統領は米国の労働者と産業の競争条件を公平にすべく一貫して闘ってきた。政権はすべての貿易相手と生産的な議論を続ける」とデサイ報道官は表明した。
米政権は緊張緩和に向けたさらなる取り組みの一環として、8月12日の対中関税一時停止措置の期限を延期する準備を進めている。同日に90日間の休戦が期限を迎え、対中関税率は145%に戻ることになっている。ベッセント長官は今週、この期限は柔軟に対応可能だとブルームバーグテレビジョンのインタビューで示唆した。
関係者の1人によると、中国との休戦はさらに3カ月延長される可能性がある。その一方でトランプ氏は、主要な同盟国を含む他国・地域に対して新たな関税措置を打ち出しており、医薬品や半導体などの分野別関税の引き上げも警告している。
原題:Trump Softens Tone on China to Secure Xi Summit and a Trade Deal(抜粋)
--取材協力:Jordan Fabian、Catherine Lucey.
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