米銀大手JPモルガン・チェースは、顧客の口座情報へのアクセスに対して手数料を課す方針を金融テクノロジー(フィンテック)企業に通知した。手数料は数億ドル相当に上る見通しで、フィンテック業界のビジネスモデルを根本から揺るがしかねない動きとなる。

事情に詳しい関係者によると、JPモルガンは、銀行とフィンテック企業をつなぐデータ仲介業者に対し、新料金を記載した価格表を送付した。手数料の水準は情報の利用方法により異なり、特に決済関連のサービスを手がける企業には高い料金が適用される見通しだという。関係者は部外秘の情報だとして匿名を条件に語った。

JPモルガンの広報担当者は、顧客データ保護のために多大なリソースを投じて安全なシステムを構築してきたと説明。「当社は顧客の安全確保に必要なインフラ投資をわれわれ全員が確実に進めるよう、関係各方面と生産的な対話を重ね、連携している」との声明を出した。

新たな手数料は確定ではなく、交渉次第で変更される可能性もある。

フィンテック企業の多くは、顧客の銀行口座にアクセスできることが事業の前提となっており、手数料が導入されれば大きな変革を迫られることになる。オンライン決済サービス大手ペイパル・ホールディングス傘下のベンモや、暗号資産(仮想通貨)交換業者コインベース・グローバル、個人向け株式取引アプリのロビンフッド・マーケッツなどは、いずれも口座情報を利用することで送金や決済、投資などのサービスを提供。これまでは通常、こうした情報は無償で取得できた。

多くのフィンテック企業は、プレイドやMXといったデータ・アグリゲーターと呼ばれる仲介業者を通じて情報にアクセスしている。JPモルガンの新料金が導入されれば、仲介業者経由でフィンテック企業、さらには最終的には消費者に手数料負担が波及する可能性がある。関係者の1人によれば、仲介各社はJPモルガンと手数料に関する協議を続けており、現時点では建設的な対話が行われているという。

バイデン政権は昨年10月、データ共有に関する「オープン・バンキング」規定を取りまとめた。これは消費者が自らの金融データを他の金融機関やサービス提供者に無料で移転できる権利を保障するもので、今回のJPモルガンによる手数料徴収の動きは同規定の行方にも左右される。

11日の株式市場でブロックやアファーム・ホールディングスなどのフィンテック企業や決済会社の株価は下落した。ペイパルは一時6.5%安となった。

原題:JPMorgan Tells Fintechs to Pay Up for Customer Data Access (1)(抜粋)

(フィンテック企業の株価を追加して更新します)

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