(ブルームバーグ):マッチングアプリに不満を持つ独身者が、高級な結婚紹介サービスに対して高額を支払っている。
創業約15年の結婚相談所スリー・デー・ルールのアダム・コーエンアスラテイ最高経営責任者(CEO)は、「先月の売上高は月間として当社史上最高となった。われわれのビジネスは縮小していない」と語る。
同氏だけではない。ブルームバーグが取材した複数の企業によると、パーソナライズされた婚活サービスの需要は増えている。顧客はマッチングアプリから乗り換えた理由として、「アプリ疲れ」や本当のつながりを求めていることを挙げた。
マッチメーカーは、真剣な交際や結婚を望む人々に相性の合うパートナーを紹介することを目指している。初デートの前には、犯罪歴や婚姻歴が調査され、身長や宗教といった希望条件に基づいてマッチングが行われることも多い。
独立系映画会社A24の新作「マテリアリスト」(原題)の公開に伴い、こうしたサービスが再び注目されている。
この映画は、敏腕マッチメーカーである主人公(ダコタ・ジョンソン)が自身の恋愛で、裕福な求婚者(ペドロ・パスカル)と貧しい元恋人(クリス・エヴァンス)の間で揺れ動く物語。かつてニューヨーク市でマッチメーカーとして働いていたセリーヌ・ソン監督が脚本を手がけた。
公開直後の週末の興行収入は1200万ドル(約17億4000万円)と、A24の作品としては「シビル・ウォー アメリカ最後の日」と「ヘレディタリー/継承」(いずれも邦題)に次ぐ3位となった。

スワイプ操作に疲弊、現実とのギャップも
マッチングアプリの延々と続くスワイプ操作に嫌気が差し、もっと良い相手がすぐそばにいるかもしれないという期待もあって、アプリに不満を募らせるユーザーもいる。また、実際に会ってみると、デジタルでの印象と合わないことも多い。
ニューヨーク市在住のクリスティン・ルッソさんはこうしたアプリについて、「フルタイムで働きながら、本気で時間と労力を費やすのは本当に疲れる」と話す。
マッチ・グループのマッチングアプリ「ティンダー」の有料ユーザー数は8四半期連続で減少しており、再び増収に転じるのは2027年以降とみられている。

高額でも価値あるとの声も
スリー・デー・ルールの元利用者エリオット・ガルパーン氏は、同社のサービスを通じて現在の妻と出会った。数千ドルを支払ったことは後悔していないという。担当のマッチメーカーは、初デートの服選びを手伝い、自信を持つための助言もくれた。「今どき、デートのアドバイスなんて誰もしてくれない」とガルパーン氏はこぼす。
それでも成功が保証されているわけではなく、うまくいかなかった場合に高い費用が一層のいら立ちを招くかもしれない。
高額な料金には高い期待も伴う。リジー・グァリーノさんはかつてスリー・デー・ルールで6カ月8900ドル、3カ月5900ドルの料金を提示された。彼女はよりコストの安い競合サービスを選んだが、現在の婚約者と出会ったのは他の場所だった。
不況でも堅調な婚活市場
結婚紹介サービスは高級サービスに分類されるが、高級品消費が直面している経済的逆風の影響はほとんど受けていない。

そうしたサービスの費用は最高で数十万ドルに上ることもある。一方、マッチングアプリはもっと安く、複数段階の料金プランがある。例えば、「ヒンジ」のプランは月額29.99ドルからで、ティンダーの最上位プランは月額500ドルだ。マッチは22年、高価格帯市場への参入を狙い、若手プロフェッショナル層を対象とする結婚紹介サービスの「ザ・リーグ」を買収した。
コーエンアスラテイ氏は「マッチングアプリと結婚紹介サービスには大きな違いがある。前者は自分で条件を細かく設定して理想を追求するのに対し、後者にはあなたを理解しようとする誰かがいる」と指摘。マッチメーカーが時間をかけて顧客の本当の姿を知れば知るほど、マッチングの精度が向上するというのだ。
若い男性の関心高まる、コロナも影響
NYシティー・マッチメーキングのオーナー、ミシェル・フランケル氏によると、23-30歳の男性の間で登録者が著しく増えている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期にデート機会が失われたことが背景にあると同氏は分析する。
需要に対応するため、同社はここ3カ月でマッチメーカー3人を採用した。フランケル氏は「こうしたトレンドは以前から見えており、ますます忙しくなることは分かっていた。この映画が公開されたことで、さらに忙しくなるのは間違いない」と述べた。
原題:Elite Dating Services Are Thriving as Love Defies Economic Woes(抜粋)
--取材協力:Natalie Lung、Rachel Phua.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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