米銀シティグループでテクノロジー&ビジネスイネーブルメント責任者を務めるティモシー・ライアン氏は、グローバル行員向けタウンホールミーティングに初めて臨む際、10代の子供からある助言を受けた。

テクノロジーをしっかり機能させてという実に的を得た言葉だったが、シティではそれが常に当たり前と言えなかった。

ボストン出身の真面目で物静かなライアン氏は、ハイスクール時代に大した人物になれないと言われた経験を持つ。シティで長年使われてきたレガシー(旧態依然の)ソフトウエアやデータシステムの整理に過去1年取り組んできた。

これらのソフトやシステムは、稼ぎ頭のマネーメーカーや規制・監督当局の不満を募らせ、業界のジョークの対象にもなった。入力ミスによる巨額の誤送金の一因と指摘されたことは有名だ。

シティ傘下のシティバンクが、米化粧品メーカーのレブロン向け融資の事務代行で、債権者の一部に未返済の元本全額9億ドル(現在の為替レートで約1300億円)余りを誤送金した失態は、5年前の出来事だ。

送金処理を担当するスタッフが、ドルの額を記載する欄に口座番号を誤ってコピー・アンド・ペーストし、約60億ドルを顧客口座に危うく送金しかけるミスも今年発覚した。英紙フィナンシャル・タイムズによると、別の顧客に81兆ドルをあわや送金しそうになる事故も発生した。

ライアン氏の統括部門は今や十分な成果を挙げ、進捗(しんちょく)状況と今後の展望の最新情報を伝えるため、グローバル行員向けのタウンホールミーティングを開催した。シリコンバレーの新製品発表さながらの熱気に包まれる中で、ジェーン・フレーザー最高経営責任者(CEO)も登場し、「ライバルに圧勝する」前進を続けるよう技術担当者らを鼓舞した。

規制・監督当局への届け出によれば、シティは昨年、全営業費用の約5分の1に相当する90億ドル強の通信・技術投資を行った。営業費に占める割合は他の主要な競合行より高い。

ライアン氏が着任する以前、同行の技術チームは「ベライゾン・マフィア」と呼ばれていた。ベライゾン・コミュニケーションズからバークレイズ、JPモルガン・チェースを経てシティに移籍したマネジャーらの存在が大きかった。

シティの正社員22万9000人のうち、バックオフィス系の技術部門には5万人が在籍し、さらに契約社員4万5000人が加わる。インドと中国、英国、カナダにも拠点があるが、幹部クラスの多くはテキサス州アービングに集中している。

ライアン氏は着任後、人員を再編し、中核拠点に集約する過程で中国の一部で3500人を削減した。管理職の入れ替えも進め、一部は退職した。

 

原題:Citi Fat-Finger Errors, Aging Software Drive Tech Boss’s Agenda(抜粋)

--取材協力:Matthew Boyle、岩城伸也.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.