(ブルームバーグ):日本銀行の植田和男総裁は1日、次の金融政策決定に向けて追加のデータを見極める考えを強調し、利上げを急いでいないことを示唆した。
植田総裁はポルトガルのシントラで開催された欧州中央銀行(ECB)の年次フォーラムで、「政策を判断するにはもう少し情報が必要だ」と発言。日銀は基調的なインフレの強さや米国の関税の影響、今後落ち着くとみられる食品インフレの動向を注視していると述べた。
植田氏の発言からは、トランプ米大統領の貿易政策に関連する不確実性を踏まえ、様子見姿勢を続けていることがうかがえる。トランプ氏は前日、米国産コメの輸入に消極的だとして、日本に新たな関税水準を賦課する構えを見せていた。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長やECBのラガルド総裁らが同席したパネル討論会で、植田氏は政府が行っている貿易交渉については直接的なコメントを控えたいと話した。
5月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比のプラス幅が前月から拡大し、2023年1月以来の高水準となった。コアCPIは6カ月連続で3%台の伸びが続いており、日銀目標の2%を上回るのは38カ月連続となる。
植田氏はこれまで、緩やかな利上げペースが適切だとの考えを示している。基調的な物価の伸びが、賃金と物価の好循環に支えられつつも日銀の目標を依然として下回っていることを理由に挙げている。
「ヘッドラインのインフレは2%を上回っている。基調的なインフレは2%を下回っている。私は両方を任期終了までに2%に収れんさせたい」と植田氏は発言。2028年4月に満了する任期の残りに関する質問に答えた。
植田氏は任期中にバランスシートの縮小を完了できない可能性にも言及した。日銀は先月、市場のボラティリティーが高まったことを受けて、国債買い入れの減額幅を圧縮することを決めた。
2年前のECB年次フォーラムと同様に、植田氏はジョークも飛ばした。同氏は昨夜あまり眠れなかったと切り出し、夕食の席で隣に座っていた韓国銀行(中央銀行)の李昌鏞総裁がエスプレッソはカフェインが少ないと教えてくれたため、「すぐに1杯飲んでしまった」と語った。
日銀は7月30、31日の次回会合で政策の現状維持を決めると広く予想されている。
原題:BOJ’s Ueda Still Needs More Information to Decide Next Rate Hike(抜粋)
(第5段落以降を追加し、更新します)
--取材協力:Jana Randow、Bastian Benrath-Wright、William Horobin、Alexander Weber、Mark Schroers.
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