(ブルームバーグ):トランプ米大統領は1日、適用を一時停止している上乗せ関税について、今月9日の猶予期限を延長する考えはないと明言した。また、日本との通商合意がまとまる可能性は低いとの認識を示した。
トランプ氏は大統領専用機エアフォースワンの機内で、猶予期限を延長する意向かとの記者団の質問に、「いや、猶予は考えていない」と答え、「多くの国に書簡を送ることになるだろう」と述べた。
日本については、「極めて大きな貿易赤字を抱えているため、30%や35%、あるいはわれわれが決める数字」の関税を課すことになるだろうと言明。 「合意に至るかどうか分からない。日本と合意できると思えない。彼らは非常に手ごわい」と述べた。
トランプ氏は1日、米国産コメの輸入を受け入れていないとして日本への批判を強めた。自動車貿易についても不公平だと指摘していた。
大統領は4月に日本からの輸入品への24%の上乗せ関税を発表したが、90日間の交渉期間中は一律10%の基本税率にとどめている。
日本政府は米国との通商交渉で安定的かつ友好的な姿勢の維持に努めてきたが、トランプ氏が圧力を強め、その戦略は試練にさらされている。日本側は自動車産業をはじめとする重要分野での関税見直しを強く求めてきたが、慎重な交渉姿勢が裏目に出る可能性もある。
「私は日本が大好きだ。新しい首相もとても気に入っている」とトランプ氏は記者団に述べた上で、「だが、日本も他国と同様に、30年、40年もの間米国との不公正な貿易関係に甘えてきた。そのため、合意をまとめるのは非常に難しい状況だ」と語った。

大統領の指示
ベッセント米財務長官は1日、日本との関税交渉を巡る質問に対し、米国民にとって取引が公平でない場合、トランプ氏から受け入れないよう指示されていると述べた。FOXニュースとのインタビューで発言した。
日本との関税交渉について何が問題なのかと問われ、ベッセント氏は多くの貿易相手国・地域と極めて強力な取引について交渉していると説明した。
「トランプ氏がここ数カ月で行ったことを考えてほしい。われわれは国際貿易システムのリバランスに取り組み、米国民にとって公平なものにしつつある」とした上で、「米国民にとって不公平な取引なら受け入れないよう、トランプ大統領はわれわれに指示した」と述べた。
トランプ氏が猶予期限を延長しない意向を示したことを受け、米国株は下落。恐怖指数として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)は一時16.8を上回ったが、その後、上げ幅を縮小した。
大統領の発言後、ブルームバーグのドル指数はほぼ変わらず。円は対ドルでの堅調を維持し、他のG10通貨全てに対しアウトパフォームした。
トランプ氏はこの数週間、高関税率の発動を繰り返し示唆し、交渉相手への圧力を強めている。
一方、ホワイトハウスのハセット国家経済会議(NEC)委員長は6月30日、7月4日の独立記念日を過ぎ、議会で審議中の税制・歳出法案も可決・成立すれば、複数の貿易合意が発表されるとの見通しを示唆していた。
対インド交渉
トランプ氏は、インドとの通商合意については、より楽観的な見方を示した。1週間以内の合意成立の可能性を巡る質問に対し、「可能性はある。これは異なるタイプの合意になるだろう」と答えた。
さらに、「われわれがインド市場に参入し、競争が可能になる合意となるだろう。今のところインドは参入を認めていないが、今後は変わるだろう。そうなれば、はるかに低い関税率について合意することになる」と語った。
インドのジャイシャンカル外相は今週、米国との最終合意に近づいているとの認識を示した。現在、分野別の関税導入や、米国産遺伝子組み換え(GM)作物に対する市場開放など、主要な争点の調整が続いている。
インド商工省のアガルワル主席交渉官は米国滞在を延長して調整作業を続けており、交渉は山場を迎えている。
原題:Trump Sticks With July 9 Tariff Deadline While Hitting Japan(抜粋)
(トランプ氏の対インド交渉に関するコメントなどを追加して更新します)
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