トランプ米政権による締め付けが強まる中で、米大学院に在籍する留学生が急増している。その背景には何があるのだろうか。

国際教育研究所のデータによると、2023年秋には米国の大学院に在籍する外国人留学生が50万人を超え、21年比で30%増えた。

確かに米国の教育機関は世界中から積極的に留学生を受け入れている。人員を補いたい研究室などはその傾向が特に強い。しかし、こうした流れを支える企業もある。

米国の2社を含む少数の企業が、途上国出身の外国人留学生向けに、担保や米国人の保証人を必要としない革新的なローンを提供している。これが、途上国からの大学院留学生の比率が増えている一因だ。

特にSTEM(科学・技術・工学・数学)を学ぶ留学生たちは、無担保でも貸し倒れリスクが低いと見なされ、金融機関にとって急成長中の事業となっている。

 

ワシントンに本拠を置き、米国およびカナダの外国人大学院生向けに融資を行っているMパワー・ファイナンシングの企業戦略・政府対応部門責任者サーシャ・ラマニ氏は、同社を利用した「学生が卒業後に得るグローバルの平均年収は約9万ドル(約1300万円)」だと話す。

ラマニ氏によれば、これは家族を含めた入学前の平均年収の15倍に相当する。

ローン証券化2件に関する数値の分析によると、Mパワーは昨年、外国人留学生に少なくとも2億ドルを融資した。同社は16年の融資開始以来、計5億2800万ドルを証券化。さらに1億-1億5000万ドルの融資を実行しているが、これはまだ証券化されていないと同社関係者は述べている。

Mパワーにとって最大のライバルは、より規模の大きいプロディジー・ファイナンスだ。グローバル最高商務責任者(CCO)のソナル・カプール氏によれば、ロンドンを本拠とする同社は07年以降に計23億ドルを融資した。

借り手の約4分の3は米国の大学院に在籍している。融資の詳細には踏み込まなかったが、カプール氏は24年末に米政府機関から3億1000万ドルの融資を確保し、26年半ばまでの貸付金に充てると明かした。

また、プロディジーは米国際開発金融公社(DFC)とその前身機関から最大5億6000万ドルの融資を受けているという。

アフリカ

米国の大学院に在籍するアフリカ出身の留学生が急増する中で、無担保ローンは特に魅力的な選択肢となっている。

Mパワーの貸し付けもアフリカ人学生向けが急増しており、直近の証券化案件(対象期間1年1カ月)では、アフリカ4カ国の学生向けローンが全体の半分(1億5600万ドル)を占めた。

一方、インドからの学生は23年時点でアフリカ全体の7倍に上る数が米国に渡っているにもかかわらず、融資額が6000万ドルにとどまっている。昨年9月にはプロディジーもアフリカ人学生向けに3000万ドル規模のローンプログラムを開始した。

先進国の信用情報ネットワークの外で生活していた学生たちに融資する際には、返済能力を判断する上でより幅広い視点が求められる。

Mパワーは各国の信用情報を収集するが、審査の中心は借り手の「学業と職業上の将来性」にあるとラマニ氏は説明する。また、連邦学生ローンの返済実績や大学ランキング、卒業率、就職状況、借り手の実績データを分析し、大学についても調べている。

その結果として、「アフリカ出身のMパワーの学生が、他国出身の同等の学生と比べて、著しく高い金利を課されたり、承認率に差が出たりすることはない。金融機関として法的にもそれは禁じられており、われわれの分析でも出身国が信用行動に大きな影響を与えることは示されていない」とラマニ氏は指摘している。

とはいえ、融資金利は高めだ。Mパワーが最近証券化したローンの平均金利は14%だった。ジョージタウン大学マクドノー経営大学院に在籍するナイジェリア人のマイケル・イボンイェ氏は、Mパワーから年利15%(手数料込み)のローンでMBA(経営学修士)取得費用の「大半を賄った」と語る。

ローンがなくても経営大学院に進学していたと思うが、「ジョージタウンではなかった。他の大学院からはもっと多くの奨学金を提示されていたし、授業料も安かった」と言う。残りの費用は貯蓄と家族からの支援、奨学金で補ったという。

ラマニ氏によれば、自国で「かなり厳しい」条件のローンを借りるより、Mパワーの融資の方が学生にとってはるかに負担が少ない。「例えばブラジルでは、金利は月利で表示されることが多く、年換算で30%超となるケースも珍しくない」と述べる。

プロディジーも同様のアプローチを採用しており、学生は年8-13%の変動金利で融資を受けている。カプール氏は最近の平均金利には触れずに、「従来の資本の貸し手が特定地域のリスクをどう見るか」という構造的課題が、アフリカ人学生への融資を難しくしていると電子メールで認めた。

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)

原題:Lenders Find a Fast-Growing Market in Foreign Grad Students (1)(抜粋)

--取材協力:Mathieu Benhamou.

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