(ブルームバーグ):S&P500種株価指数が最高値を更新した後、相場の一段高を見込むトレーダーは、同指数を上回る上昇が期待される人気銘柄に資金を振り向けている。
ストラテジストによると、デリバティブ取引のシグナルは明確で、先週は資産価格の一段高を見込んだコールオプション(買う権利)の買いが活発だった。中でも注目を集めたのは、25日のエヌビディア株で、コールオプションの取引量はプットオプション(売る権利)のほぼ3倍に達し、1月以来の開きとなった。「ファイナンシャル・セレクト・セクターSPDRファンド」のコール・プット・レシオは4カ月ぶりの高水準に上昇。メタ・プラットフォームズ株も一段高への期待から、売りに備えるヘッジコストが2カ月ぶりの水準に低下した。
サスケハナ・インターナショナル・グループのデリバティブ(金融派生商品)戦略共同責任者クリス・マーフィー氏は、中東紛争や米経済・企業収益の鈍化懸念にもかかわらず株式相場が上昇を続けているため、リスク選好の動きが強まっていると指摘する。エヌビディアに加え、先週はウーバー・テクノロジーズやテスラ、ロビンフッド・マーケッツなどのモメンタム銘柄でもコールの買いが活発だったという。
マーフィー氏は「今週のオプション市場は、FOMO(乗り遅れ恐怖症)に駆られたリスクテークの再開を如実に示している」と指摘。「この傾向は明確で、強気のフローがほぼ全面に広がっており、モメンタム株へのコール買いと押し目でのプット売りが目立つ」と述べた。

米国が主要貿易相手国との合意に近づいているとの楽観的な見方が、米国株を過去最高値に押し上げた。S&P500種をベンチマークとする最大規模の上場投資信託(ETF)「SPDR・S&P500ETFトラスト(SPY)」の値下がりに備えたヘッジ需要は、過去1週間で急速に後退した。これは通常、楽観ムードの高まりを示唆する動きだ。
一方、矛盾したシグナルも見られる。27日午後、トランプ米大統領がカナダとの貿易協議を全て打ち切ると表明し、1週間以内に新たな関税率を設定すると警告したため、米国株は一時急落した。しかし、その後は上げに転じ、史上最高値で終えた。

バンク・オブ・アメリカ(BofA)のストラテジストは27日、米国の利下げ観測を背景に株式市場へ大規模な資金流入が続いており、投機的な株式バブルのリスクが高まっていると指摘した。次の決算発表シーズンは特にさえない業績見通しが相次ぐとみられ、最近の株高の持続力が試されるだろう。
現在の不透明なマクロ経済環境では、カナダとの通商交渉の決裂など、事態が一段と悪化する可能性も非常に高まっている。こうしたなか、サスケハナのマーフィー氏は、投機的な株価の上昇を追う際にはコールオプションの活用が望ましいと述べている。
これにより、損失を限定しながら、上昇の恩恵を享受できる。コールオプションはより高い価格で株式を購入する権利を付与するが、購入を義務付けるものではない。つまり賭けが裏目に出た場合でも、失うのはその権利のために支払ったプレミアムにとどまる。
FOMOラッシュ
リスクの高い株式に資金が殺到し、急激な上昇を求めている証拠はさらにある。背景には、一段高を逃すまいとする心理がある。ボラティリティーが高い銘柄に連動する「インベスコS&P500種ハイベータETF」は、「インベスコS&P500種ローボラティリティーETF」との比較で、2020年以来の高い四半期成績を記録しそうだ。空売り比率の高い銘柄で構成されるゴールドマン・サックスのバスケットは、2024年2月以来の高い月間上昇率が見込まれる。
資産価格の上昇を追う意欲も高まっており、トレーダーが強気な投資にどれだけ支払うかを示す「コール・スキュー」は先週、テスラや「ARKイノベーションETF」、コインベース・グローバルなどいくつかの投機的な銘柄でスティープ化した。
パイパー・サンドラーのオプショントレーダー、トム・キーン氏はコールオプションの売買高増加とコールオプションのインプライドボラティリティー上昇の両方がFOMOラッシュを示唆していると述べた。
「夏が始まる中で、マクロリスクが低下傾向にあり、実現ボラティリティーも低水準にある。最近の力強い価格動向を予想していなかった投資家は多い」と説明。特に関税の期限が迫る中でリスクは残るが、前向きに解釈したい材料はあるという。
原題:FOMO-Driven Call Buying Soars as Traders Chase S&P 500’s Run(抜粋)
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