(ブルームバーグ):産業革新投資機構(JIC)傘下で、今後解散するINCJ(旧産業革新機構)の志賀俊之会長は「業界再編をもっとやりたかった」と30日の退任会見で振り返った。業績が悪化してから再編に動き出す企業が多いとして、「どうしても官民ファンドとしては手を出しにくかった」と悔しさをにじませた。
志賀氏は「日本の産業競争力が弱くなってきている」と指摘。リチウムイオン電池や半導体業界などを例に、再編が進まず国内での過当競争で疲弊し、中国・韓国企業に勝てない状況が続いているとの見方を示した。会見には勝又幹英社長も参加した。
発表資料によると、3月末時点で投資見合い元本1兆2823億円に対し、2兆3260億円を回収しており、累計1兆円超の利益を確保した。「ホームラン案件」(勝又氏)だったルネサスエレクトロニクスの株式売却益の貢献が大きく、勝又氏は「件数的、金額的にそれなりに巨大なポートフォリオを築き、最終的に国に貢献できたと言える」と総括した。
反省点を問われ、志賀氏は、ルネサス、ジャパンディスプレイ(JDI)、JOLEDの大型3案件に投資総額の半分近くを費やした資金の偏りを挙げ、民間なら追加投資をしない案件でも、官民ファンドは社会的影響を考え途中で手を引くのは難しかったと振り返った。JDI支援に4620億円を投融資したが、回収額は3073億円にとどまった。約1400億円を支援したJOLEDは破綻した。
INCJは2009年、次世代の国富を担う産業の育成・創設を目的に設立された。3月末までに144件中143件の投資回収を完了し、15年間の活動を事実上終了。志賀氏、勝又氏は6月30日付で退任する。同様の投資は後継組織のJICに一本化される。
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