(ブルームバーグ):トランプ米政権が貿易相手国・地域に課す上乗せ関税の一時停止期限が7月9日に迫っている。しかし、ホワイトハウスが3カ月の猶予期間中の達成を掲げた国際貿易の抜本的改革は実現しそうにない。
トランプ大統領の顧問らによれば、米国の主要貿易相手国のうち最大12カ国・地域との合意が、7月9日の期限までにまとまる見込みだ。だが中国および英国との先の合意を見る限り、核心的な問題を解決する包括的取り決めとはならず、限られたテーマへの対応にとどまり、詳細の多くは今後の協議に委ねられる可能性が高い。
デューク大学ロースクールのティム・マイヤー教授(国際貿易)は「ホワイトハウスは、幾つかの枠組みを貿易合意として発表するだろうが、その言葉から通常理解される内容を満たすものとならないだろう」と指摘した。
合意に至らない他の数十カ国に対し、トランプ大統領は上乗せ関税を課す構えだ。ベッセント米財務長官は27日、CNBCとのインタビューで、それは主に「比較的小さい貿易相手国」になるだろうと語った。
トランプ大統領と顧問らは、どの国が合意に近づき、どの国が外れているか曖昧なシグナルを発するだけで、7月9日の期限を前に投資家は神経質になっている。一連の交渉の行方は、2024年大統領選の主要公約の一つである貿易政策の今後を左右するだけでなく、世界経済や米国と同盟国・対立国との関係にも重大な影響を及ぼす可能性がある。
その重要性にもかかわらず、トランプ政権が7月9日の期限を厳守するか、あるいは交渉継続のため期限を延長するか、引き続き見通せない。

ベッセント財務長官は27日、7月9日までに合意に至らない約20カ国・地域については、協議の継続が可能であり、「誠実に交渉を進めている」と判断すれば、4月5日に発動した一律関税(10%)だけが適用され、そうでなければ上乗せ関税が課されると述べた。
しかしその数時間後、トランプ氏は各国・地域の関税率を一方的に設定する構えをあらためて示し、7月9日より前にそうする可能性にも言及。数百カ国と個別に合意をまとめるつもりはないと発言した。

トランプ大統領は27日、カナダのデジタルサービス課税(DST)導入を理由に同国との貿易協議を全て打ち切るとソーシャルメディアで突然表明し、1週間以内に新たな関税率を設定すると警告した。トランプ氏が協調的でないと考える国・地域の首脳らへの威嚇射撃とも解釈できる動きだ。
これを受け、カナダ政府は29日、米国との互恵的な包括的貿易取り決めの締結に向け、メタ・プラットフォームズなど大手テクノロジー企業を対象とするDSTを撤回すると発表。カナダのカーニー首相とトランプ大統領は、7月21日までの合意を目指し、貿易交渉を再開する。
トランプ氏が矢継ぎ早に繰り出すステートメントは、いかに急激な政策転換があり得るか各国・地域の政府にあらためて思い起こさせた。
事情に詳しい関係者によると、米国は台湾やインドネシアを含む一部の国・地域と合意に近づき、ベトナム、韓国との合意もあり得る。インドの交渉団は、主要な懸案を打開すべくワシントンで先週協議を行った。米国と欧州連合(EU)の双方も合意成立に従来より楽観的だ。
ラトニック商務長官は先週、ブルームバーグテレビジョンに対し、7月の期限までに主要国・地域との間で「トップ10のディール」が幾つかまとまる見通しだと語った。ナバロ大統領上級顧問は4月の段階で、「90日間で90のディール」が目標だとしていた。
原題:Trump Deals Poised to Fall Short of Sweeping Trade Reforms (2)(抜粋)
(カナダ政府の動きなどを追加して更新します)
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