(ブルームバーグ):台湾の投資家の間で米債券に連動する上場投資信託(ETF)から資金を引き揚げる動きが広がっている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が始まって以降、最も速いペースで売却が進み、「米国売り」の勢いが浮き彫りとなっている。これが台湾ドルの一段の上昇につながる可能性もある。
ブルームバーグの集計データによると、台湾に上場し米債券に連動するETFからの純流出額は、年初来で約33億米ドル(約4770億円)と、1-6月としては2020年以来の規模。他のアジア市場と比べても流出が目立っている。

米財政を巡る不確実性や、トランプ政権の予測困難な通商政策に起因する米国債の価格変動に対する懸念に加え、台湾ドル高もあって投資家が資金を引き揚げつつあるとアナリストは指摘する。こうした動きは、米国の政策に対する信頼感の低下を反映し、為替相場にも波及しかねない資本フローの反転を示唆している。
INGグループの大中華圏担当チーフエコノミスト、リン・ソン氏は「台湾ドルの安定性に疑問が生じ、米ドルの一段安が予想されるようになれば、台湾の投資家にとっては米債の魅力が当然低下する」と話す。
台湾はアジア太平洋で最大の債券ETF購入地域で、約920億ドルの運用資産の多くが米国の国債や社債に投資されている。
台湾の特性
ブルームバーグがまとめたデータによれば、台湾で米債に連動するETFは4月まで3カ月連続の資金流出を記録。5月に小幅な回復を見せたものの、6月には再び資金の引き揚げが起きた。
日本や韓国、香港といった他のアジア市場よりも台湾での流出が顕著なのは、個人投資家の比率が高いという市場の特性が一因だと、中信投信で債券ポートフォリオマネジャーを務める張勝原氏は指摘。個人投資家は中央銀行や大手機関投資家に比べ、市場の変動に過敏に反応しやすいという。
「さらに、最近の台湾ドル高で投資家が保有する米債の価値が目減りしている」と張氏は述べた。
台湾ドルは27日、一時約0.7%上昇し1米ドル=28台湾ドル台を付けた。輸出依存型の経済や多くの外貨建て資産を持つ台湾の生命保険会社に圧力となっている。
原題:Taiwanese Investors Flee US Bond ETFs as Currency Risks Mount、Taiwan Dollar Climbs Past 29 Per Greenback, Pressuring Insurers(抜粋)
--取材協力:Jacky Wang.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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