(ブルームバーグ):トランプ政権が米国際開発局(USAID)を事実上解体するなど、米国の対外援助政策が一変しつつある中、「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」のメリンダ・フレンチ・ゲイツ氏に話を聞いた。
同氏は30年余り前にマイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏と結婚。その後、ビル氏と共に同財団を設立した。ビル氏とは2021年に離婚したが、その後も同財団を通じ、積極的な慈善活動を続けている。
- 慈善活動が社会問題の解決にほとんど効果を上げていないとの批判があります。寄付は増えているのに、問題は悪化しているという指摘をどう捉えていますか?
私はそうは思いません。命を救うワクチンが開発され、世界中で接種されたことで、何百万人もの人々が救われたことは明らかです。低所得国の父親や母親たちは、はしかのワクチンを子どもに接種させようと列に並びます。なぜなら、地域ではしかが流行すれば、子どもが命を落とすからです。
慈善活動が全て素晴らしかったのかと言えば、そうではありません。慈善活動は、あくまで数ある手段の一つに過ぎません。慈善活動は、税金を使う政府では踏み切れないようなリスクを取ることができ、それによって大規模に物事を実証することができます。そして、その実証が成功すれば、政府がそこに介入し、さらに拡大することができるのです。
- 現在の米政権の動きを踏まえ、寄付活動に関する戦略をどのように変えていますか?
どれほどの慈善活動であっても、米政府による支援の喪失を補うことはできません。皆さんに最も理解してほしいのは、それが米政府の予算全体の1%にも満たない、いや、はるかに下回る規模だったということです。慈善活動ではその穴を埋めることはできません。
私にできるのは、地域社会で人々を支えようと活動している他の人々に資金を提供することです。米国は、世界各地に疾病を報告するインフラを築いてきました。それによって、病気が国内に入ってくる前に察知できるのです。そのインフラは全て崩壊することになるでしょう。本当に全てです。
- 影響は科学だけでなく、教育省にも及ぶ可能性があります。これは米国にとってどういう意味を持つのでしょうか?
まだ分かりません。こうした実験はこれまでありませんでした。ただ、私が知っているのは、米国には健全で活力のある民主主義があったということです。
問題があったのは確かですし、改善の余地があることは私が真っ先に認めます。でも、今この時点で教育省を廃止するなんて、どうしてそれが学生たちのためになるのでしょうか。
- あなたはカマラ・ハリス氏を支持しました。大統領選で候補者を支持したのは初めてですね。次の選挙までに何を望んでいますか?
中間選挙、そして4年後に控える選挙において、もっと多くの女性候補者、そして有色人種の候補者が立候補することを望んでいます。女性が州議会に入り、連邦議会に入り、有色人種がそのような地位に就くと、社会のために異なる政策を生み出すからです。
- ゲイツ氏と結婚した際、婚前契約書は交わしていなかったと聞きました。驚きました。離婚の際には、司法省と対峙(たいじ)した経験もある相手と交渉しなければなりませんでした。交渉を通じて何を学び、どう振る舞ったのでしょうか? そして、望んでいたものを手にできましたか?
私は素晴らしい人々に囲まれることの大切さを学びました。それは私生活でも、仕事の場でも同じです。私は自分を支えてくれるチームに恵まれ、その中で多くのことを学びました。それ以上のことは言いません。
(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
原題:Melinda French Gates on Philanthropy in the Age of Trump(抜粋)
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