地政学リスクの高まりにもかかわらず、最近の株式相場が落ち着いた動きを示していることは、オプショントレーダーにとって難題となっていた。

トレーダーらは、中東情勢が緊迫化した場合に不意打ちを食らうリスクを抱えながらボラティリティー低下を見込む取引をするか、それとも、実際の相場の動きが抑制されている中、ボラティリティー上昇を見込む取引をしてプレミアムを失うか、という板挟み状態にあった。米国がイランの核施設を攻撃したことで、こうした緊張感はさらに高まる見通しだ。

今回の衝突拡大に最も大きく反応するのは依然として原油市場となる可能性が高いが、投資家がリスクを消化しようとする中で、株式市場でも当初はボラティリティーが上昇する可能性がある。

イスラエルがイランに対する空爆を開始してから1週間余りで原油価格は11%上昇し、原油のボラティリティーは2022年のロシアのウクライナ侵攻以来の高水準に達した。それに対し、S&P500種株価指数は1.3%下落にとどまっている。

UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのストラテジスト、アンシ・ツォウバリ氏は「市場は反応するが、株式市場は依然として穏やかな反応にとどまるだろう」とし、「投資家は原油高がインフレに及ぼす影響についても考える必要がある」と述べた。

一部のトレーダーはトランプ米大統領の言動の変化にまひしてしまっているか、もしくは報道を追いかけるのに疲れただけなのかもしれない。ここ6カ月で市場のムードは「米国買い」から「米国売り」、そして現在の一段と不確実性の高い局面へと変化している。

リスクが和らぐたびにすぐに持ち直すことを学んだ市場は、今回の原油高についても同様の動きを示す可能性がある。ただ、最近の原油高が米国のインフレを押し上げ、利下げペースを鈍らせるリスクもある。

これはIURキャピタルの創業者でマネジングディレクター、ガレス・ライアン氏のようなボラティリティートレーダーが抱えるジレンマだ。

「現在の水準でボラティリティーを売ることは、本質的にボラティリティーイベントのリスクを伴う。しかし、ボラティリティー急上昇を見込んでプレミアムを支払うことも、価値が減少する資産を保有することを意味する」と同氏は先週に述べた。

オプション市場では、こうした環境は状況の一段の不透明化につながっている。インプライドボラティリティー(IV、予想変動率)が2カ月前の高水準から大幅に低下した一方で、オプションのプレミアムは割安ではない。主要株価指数の実現ボラティリティーの急低下によって、プレミアムは割高に見えている。

20日時点で、「恐怖指数」として知られるCBOEボラティリティー指数(VIX)はS&P500種株価指数の実現ボラティリティーとの比較で、4月以来の高水準近くとなった。同様の傾向は欧州株や香港上場の中国株にも見られている。

原題:Options Traders Wrestle With Stocks’ Muted Reaction to War Risk(抜粋)

--取材協力:Bernard Goyder、Sagarika Jaisinghani.

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