(ブルームバーグ):台湾は人工知能(AI)および半導体分野の主要企業を輸出規制リストに追加したことで、中国の技術的台頭を抑えるという米国の長年の取り組みに加わった。こうした措置は前例がなく、中国の半導体産業を孤立させようとする動きが再び強まる兆しとも受け取れる。
台湾は今月、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)と半導体メーカーの中芯国際集成電路製造(SMIC)を輸出規制リストに追加し、台湾企業が両社と取引を行うには許可が必要となった。台湾がこのリストを使って中国の大手企業に制裁を科すのは初めて。先端技術へのアクセス遮断という、米国が長年採用してきた手法を踏襲したと言える。
今回の措置は、頼清徳総統が4月、輸出規制に関する米国の懸念に対応すると表明して以降、台湾が初めて公に示した半導体分野の規制措置でもある。事情に詳しい関係者が匿名で語ったところによれば、トランプ政権は台湾に対し、半導体を巡る対中規制でより主体的な役割を果たすよう求めてきた。とりわけ現行規制の執行を重視しているという。
台湾の動きを受け、中国共産党に関する米下院の特別委員会はX(旧ツイッター)で、米国が「中国共産党による違法な技術移転の試みを阻止するため、引き続き同盟国と連携すべきだ」と表明した。
今回の決定は、中国への技術移転を制限する一連の措置の第一歩となる可能性があり、中国とのビジネス関係を重視してきた従来の方針からの転換を示す。長期的には、台湾積体電路製造(TSMC)が世界最先端の半導体企業に成長することを後押しした重要部材やシリコン素材、工場建設技術の対中供給を抑えることが狙いとみられる。
台湾政府系シンクタンク、科技、民主、社会研究中心(DSET)のアナリスト、江旻諺氏は「今回の動きは、中国との戦略的な技術競争に向かう実質的な一歩を意味する」と述べた上で、「日本や韓国など他の民主主義の先進国に比べ、台湾はより踏み込んだスタンスを取りつつある」と分析した。
頼総統は4月の発言で、台湾が米国の懸念に具体的にどう対応するかには言及せず、対米貿易関係強化に向けた包括的な戦略を説明していた。今回のファーウェイとSMICに対する制裁が、米国との関税交渉に関連しているか、あるいは米国から要請があったものかどうかは不明。
米商務省、ホワイトハウス、台湾行政院経済貿易交渉弁公室、中国外務省はいずれもコメント要請に応じなかった。
原題:US-China Tech Fight Widens After Taiwan Blacklists Huawei(抜粋)
--取材協力:Debby Wu、Catherine Lucey.
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.