(ブルームバーグ):ヘッジファンド創業者のジョナ・チェン氏は、米半導体メーカー、エヌビディアを自身のキャリアで最高の銘柄選択と評価してきた。しかし、時価総額で3兆5000億ドル(約508兆円)の同社に対する見通しへの懸念を理由に同社株を全て売却したという。
UBSグループの元アナリストで、テクノロジー関連に特化した自身のファンドで昨年42%のリターンを記録したチェン氏は、この10年で急上昇を遂げたエヌビディア株の恩恵を享受した投資家の1人だ。エヌビディア株は2016年に「キャプテン・グローバル・ファンド」を立ち上げた際に初めて購入した銘柄の一つであり、その後も再投資してきた。
しかし現在は確信が揺らいでいる。
チェン氏は第1四半期にエヌビディア株を売却した。理由として、次世代GPU(画像処理半導体)「ブラックウェル」のサーバーラック設計変更要請に伴う投入遅延に加え、在庫リスクや業績予想の上方修正が見られないことなどを挙げた。
チェン氏は「エヌビディアは本当に好きだし、人生で最も稼がせてくれた銘柄だ」と指摘した上で、「ただ、売るべきときに売らなければならない。銘柄に恋してはいけない」と述べた。同氏は運用資産約1億ドルの同ファンドを率いている。

過去5年間で1400%を超える上昇を果たしたエヌビディア株は、依然としてアナリストの支持を多く集めているが、懐疑的な見方も出始めている。
シーポート・グローバル・セキュリティーズは4月30日、「26年にAI予算の伸びが鈍化する可能性が高い」として、エヌビディアの株式投資判断に異例の「売り」評価を付けた。
また2008年の金融危機前に住宅市場の崩壊に賭けた「世紀の空売り」で有名になったヘッジファンド運用者マイケル・バーリ氏も今年、エヌビディアの株価下落で利益が得られるプットオプションを取得した。ただ、エヌビディアや他の銘柄のプットオプションについて「報告対象外のロング(買い持ち)ポジションに対するヘッジとしての役割を果たす可能性がある」という。
それでもエヌビディアは、空売りを仕掛けるには難しい銘柄だ。今年第1四半期には、中国の人工知能(AI)新興企業DeepSeek(ディープシーク)の画期的な進展をきっかけにエヌビディア株が下落したが、現在は当時の下げを全て取り戻し、年初来では13日終値時点で約6%上昇している。
米中間の緊張緩和の兆しも、世界の半導体メーカーにとっての大きな懸念材料の一つを和らげている。
UBS時代には半導体セクターのスターアナリストと称されたチェン氏だが、エヌビディアに対し長期的に弱気というわけではないという。業績予想が上方修正されれば再び購入を検討する考えで、現在は空売りもしていないと述べた。
同氏はまた、世界最大の受託半導体メーカー、台湾積体電路製造(TSMC)の株式も24年末に売却している。地政学的リスクやクラウドサービス企業による投資計画の不透明さを理由に挙げた。
現在は、ハイテク大手に部品を供給する中小企業を選好しているという。その中でも電子部品メーカーのセレスティカやコンピューター記憶装置メーカーの緯穎科技(ウィウィン)、ファンクーラーメーカーの奇鋐科技(アジア・バイタル・コンポーネンツ)、クレド・テクノロジー・グループ・ホールディングなどをトップピック銘柄として挙げている。
原題:Hedge Fund Up 42% Last Year Offloads Its Biggest Winner Nvidia(抜粋)
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