(ブルームバーグ):イングランド銀行(英中央銀行)が、今週開催の金融政策委員会(MPC)を前に、追加利下げ圧力に直面している。先週発表された様々な経済指標で、増税やトランプ米大統領による貿易戦争によって英国経済と労働市場が大きな打撃を受けていることが明らかになった。
市場では、イングランド銀に対する今夏中の利下げの見込みが、今月に入り2倍に高まった。年末まであと2回の利下げが、ほぼ織り込まれている。
イングランド銀が0.25ポイントの利下げをした5月の会合から、雰囲気は変わってきている。5月時点では、ベイリー総裁自身は四半期ごとの利下げペースを維持すべきか疑問視し、据え置きを検討していた。だが、その後出てきた経済指標は、景気減速を裏付ける内容が目立った。
英国経済は4月、関税の影響で対米輸出が過去最大の落ち込みとなり、縮小した。企業は、リーブス財務相による260億ポンド(約5兆1000億円)の給与税引き上げに対応するため、人員削減や賃金抑制を進めている。市場では、8月の利下げ見通しが6月上旬時点の40%から、現在は80%にまで上昇している。
据え置きの公算
中東の緊張を背景に原油価格が急騰し、総合インフレ率も依然として高止まりしていることから、9人で構成されるMPCは今週、政策金利を現行の4.25%に据え置くとみられている。イングランド銀行は19日正午、金融政策の決定内容発表する予定だ。
ブルームバーグが実施したエコノミスト調査によると、アラン・テイラー氏やスワティ・ディングラ氏など一部の外部委員が、利下げを支持して反対票を投じると予想されている。
モルガン・スタンレーの英国チーフエコノミスト、ブルーナ・スカリカ氏は13日のリポートで、「段階的かつ慎重な」基本路線は変更されないとみられるが、議事要旨の文言にハト派寄りのトーンがにじむ可能性があると指摘した。また、政策委員の投票が6対3に割れる可能性もあるとみている。

一方、イスラエルによるイランの核施設への攻撃を受けた中東情勢の混乱が、利下げ見通しへの重しとなっている。攻撃が行われた13日未明には、原油価格が一時13%急騰した。MPCの決定直前の18日に発表される5月の英国物価上昇率(CPI)が、利下げの一時停止を正当化する材料となる可能性もある。
原題:Dire UK Data Ramp Up Pressure on BOE to Keep Cutting Rates(抜粋)
--取材協力:Aline Oyamada、市倉はるみ.
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