世界銀行の理事会は、原子力発電プロジェクトへの支援を禁止する措置を解除することを決めた。電力需要の増加が見込まれる発展途上国での安定供給を支援し、世銀が掲げる開発目標の実現につなげる狙いがある。

バンガ総裁は11日のスタッフ向けの文書で、電力需要の増大に対応することは「われわれが直面する最も緊急かつ複雑な課題の一つだ」としている。ブルームバーグが文書の内容を確認した。

方針転換は10日の理事会で承認された。バンガ総裁は「すでに原子炉を保有する国で稼働期間を延長し、送電網の更新や関連インフラを支援する」と述べ、国際原子力機関(IAEA)と連携して実施する方針を示した。

世銀は原子力発電へのファイナンスを禁じていた。発足以後に資金提供した原子力関連のプロジェクトは、1959年のイタリア南部原発の1件のみとなっている。

バンガ総裁は、工場で生産し現地で組み立てが可能な「小型モジュール炉(SMR)」の開発支援にも取り組む方針を明らかにした。SMRは、従来の原子炉に比べて安価で建設期間が短いと期待されている。

世界銀行のバンガ総裁

電力需要が2035年までに2倍に増加すると見込まれる中、途上国を中心とする政府は、原子力発電所をクリーンで安定した電源として活用していく可能性がある。

世銀によると、電力需要を満たすために必要な年間投資額は35年までに6300億ドル(90兆7000億円)と、現在の2800億ドルから拡大する見通し。

さらに人工知能(AI)の普及が今後さらに電力需要を押し上げると予想されている。

世銀の最大の出資国である米国は、原子力支援を支持している。ベッセント米財務長官は4月、原子力発電は「多くの途上国のエネルギー供給を一変させる可能性がある」と発言し、世銀が「安価なベースロード電源の全ての技術へのアクセスを途上国に与えるべきだ」と訴えた。

一方、バンガ総裁は天然ガスの上流分野への関与には「さらなる議論が必要だ」との認識を示している。

電力の供給手段について同氏は「エネルギーミックスは国ごとに異なる」としたうえで、「目標は変わらない。それは排出量を責任ある形で管理しながら、手頃で安価で安定したエネルギーを提供することだ」と述べている。

原題:World Bank Lifts Ban on Nuclear Power, Considers Upstream Gas(抜粋)

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