(ブルームバーグ):トランプ米政権による関税措置などを巡り米中関係がここ数カ月にわたってさらに悪化する中、中国政府が米国人のインフルエンサーを招待して文化交流を促すプログラムを新たに始めている。
中国青年報などの中国政府系メディアに掲載された募集情報によると、「中国と世界の若手インフルエンサー交流プログラム」では、少なくとも30万人のフォロワーを持つ米国の若手のインフルエンサーに参加を呼びかけている。7月の10日間の日程で参加費用は無料という。
旅程では、蘇州、上海、深圳、邯鄲、 北京のほか、中国の電子商取引の中心地を巡る。中国版「インスタグラム」と呼ばれる小紅書や比亜迪(BYD)などの本社も訪問する。
太極拳などの文化活動にも参加し、万里の長城への旅の様子をライブ配信するほか、中国のインフルエンサーと協力してアイデアを出したり、コンテンツを中国国営メディアで宣伝したりすることも予定されている。
中国の習近平国家主席は昨年、米国のバイデン前大統領と会談した際に5万人の米国人学生を受け入れる計画を発表するなど、米中間の文化交流に力を入れてきた。
北米の中国人学生向けメディア「留学生日報」の投稿によると、応募条件として、インスタグラム、ユーチューブ、TikTok(ティックトック)、X(旧ツイッター)などで活動していること、「中国文化を愛し」、「不正行為の経歴がない」ことが挙げられている。
また留学生日報は、海外の中国人学生に対し、周囲のインフルエンサーに応募を勧めるよう呼びかけている。参加者として選ばれれば、中国から正式な招待状が届き、ビザ(査証)取得に向けた特別な支援も受けられるという。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後に中国を旅行した欧米人のインフルエンサーが日常生活をありのままに映したSNS向けコンテンツは中国の国営メディアに絶賛されている。米国の人気ユーチューバー、アイショースピードの中国訪問は大きな話題となった。
中国当局はこれまでもインフルエンサーを利用して中国に好意的なコンテンツの拡散を図ってきた。
シンクタンク「オーストラリア戦略政策研究所」は2023年、主に中国のソーシャルメディアで活動する120人余りの外国人インフルエンサーを分析した。その結果、同インフルエンサーらが中国の主張を称賛し拡散するためにコンテンツを投稿する見返りとして、中国側から自身の影響力増大に向けた支援を受けていることが分かったとしている。
原題:Beijing Woos US Influencers With Free Trip to Show ‘Real China’(抜粋)
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