(ブルームバーグ):世界の投資家が長期国債を敬遠する中、今週予定される米国債入札はウォール街で注目度が極めて高いイベントになりそうだ。
米財務省は12日に220億ドル(約3兆1800億円)規模の30年国債入札を実施する。定期的な借り入れの一環だが、今回は、米30年債に対する投資意欲が低迷する中で、市場の需要を直ちに読み解く手がかりとして入札結果の注目度が特に高くなる見通しだ。
ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジャック・マッキンタイア氏は「全ての入札が市場心理を測る試金石と見なされるだろう」と指摘。「米30年債は最も不人気な債券と見受けられる」と語った。
ここ数週間に長期国債利回りが世界的に急上昇している。膨張する債務残高や財政赤字への懸念からこうした債券を買い控えたり、より高いプレミアムを求めたりする動きが背景にある。
米30年債利回りは先月、一時5.15%と約20年ぶりの高水準に達した。6日時点でも4.94%と、3月の水準を0.5ポイント強、上回った。

米国が借り入れを増やすとともに、歳出が高水準にとどまる中で、利回り上昇は資金調達コストの上昇圧力となる。トランプ大統領が推進し、下院を通過した大型減税・歳出法案は、米財政赤字を今後10年間に2兆4200億ドル膨らませるとの試算もある。ムーディーズ・レーティングスは先月、米国の信用格付けを引き下げた。
「憂慮すべき財政トレンドにある」と語るのは、約7年前にファンドマネジャーから学術界に転身し、現在はラトガース大学経営大学院で金融学を教えるフレッド・ホフマン教授だ。
ホフマン氏は別荘に滞在中も入札結果を見守るつもりだという。最高落札利回りと入札前取引(WI)の利回りを比べた「テール」や応札倍率などから、需要を測る手がかりが得られる見込みだ。また、海外勢の参加状況も注目される見通しだ。
「今回と次回の入札でテールが大きく、応札倍率もひどいという不調な結果となれば事態は深刻だ」と同氏は警鐘を鳴らした。
20年債は投資家に人気があるとは言えないが、5月21日に実施された20年債入札では需要が振るわず、同日の利回りを大きく押し上げた。国際的なベンチマークである30年債も同様の結果となれば、さらに大きな懸念材料になるだろう。
米財務省は10日に3年債、11日に10年債の入札を実施する。発行予定額はそれぞれ580億ドル、390億ドル。
もっとも、いわゆる「札割れ」に陥るとの見方が強まっているわけではない。市場混乱を防ぐための安全措置も整備されている。二十数社のプライマリーディーラーで構成するネットワークが存在し、全ての入札に応札する義務を負っている。
最近の利回り上昇が、逆に投資家の関心を引き寄せる可能性もある。ブランディワインのマッキンタイア氏は、30年債を約5%の利回りで最近購入したと語っており、この水準の利回りを魅力的とみる投資家もいる。
政治的要因も作用
ただ多くの市場関係者は、たとえ米利下げが近づいて短期債の見通しが改善したとしても、長期債利回りが予見できる将来にわたり高止まりするとみている。
PGIMフィクスト・インカム(運用資産8620億ドル)のグレッグ・ピーターズ共同最高投資責任者(CIO)は長期債について、金融政策よりも政治的要因に左右される傾向が強まっていることから、投資を避ける方が賢明だと語る。
6日のブルームバーグテレビジョンのインタビューで、「長期金利市場で何が起きているかを見てほしい。乖離(かいり)が進んでいる。そこではリスクプレミアムや政治的要因などさまざま要因が作用している」と分析した。
原題:‘Most Unloved Bonds’ Turn Routine US Auction Into Crucial Test(抜粋)
(10段落目以降を追加して更新します)
--取材協力:Alice Gledhill.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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