(ブルームバーグ):政府は6日、経済政策の司令塔を担う経済財政諮問会議を開き、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案を示した。米国の関税措置に伴う日本経済の下振れリスクに触れつつ、減税ではなく賃上げを通じて経済の底上げを図る方針を明記した。
原案は冒頭、国際秩序の変化や日本の人口減少を踏まえた経済構造を作る必要性について言及。米関税措置は輸出の減少や消費・投資を下押しする恐れがあり、経済全体を下振れさせるリスクとなっていると指摘した。
その上で、一部の野党が主張する減税政策ではなく、「賃上げによって手取りが増えるようにする」との考えを軸に、経済の活性化を促す。
骨太の方針は毎年この時期に策定する経済財政政策を巡る政府の指針だ。あらゆる分野が網羅的に記述されており、時の政権が力点を置く政策を示す政府文書の一つ。夏の参院選の争点に浮上している消費税の減税よりも、賃上げで国民の可処分所得を増やす姿勢を明確にした形だ。原案は今後の政府・与党内の調整で一部修正される可能性がある。
石破茂首相は6日夕の諮問会議で、「賃上げこそが成長戦略の要」と強調。「年1%程度の実質賃金上昇」を社会通念の規範として定着させ、「賃上げを起点とした成長型経済の実現を目指す」と語った。
コメ価格の高騰問題に関する政府の対応方針にも原案は触れている。急激に上昇した価格を落ち着かせ、安定的な供給を確保するため、「政府備蓄米の流通の円滑化や消費者への丁寧な情報発信を含めた総合的対応を進める」とした。
国債の安定発行
原案の後半では、経済再生と財政健全化の両立について「経済あっての財政」との方針を改めて示した。
足元で金利が上昇傾向にあることを念頭に、「国債需給の悪化などによる長期金利の急上昇を招くことのないよう、国内での国債保有を一層促進するための努力を引き続き行う必要がある」と記した。
内閣府の担当者は記者説明で、国債保有の促進を国内勢に限った点について、海外投資家の保有率が高まることを否定するものではないとした。その上で、金利が上昇する中で国内での国債消化能力を維持していくことが大切だという議論があったと明かした。
原案は、自然災害など有事に備えた財政余力確保の観点から、今後も市場で国債を安定的に発行できる環境を整え、財政健全化に取り組む姿勢も示した。
政府が財政健全化の指標としている基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化目標は、これまで2025年度を達成時期としていたが、今回の骨太の方針では25-26年度を通じて実現を目指すとして達成時期に幅を持たせた。
金融政策を所管する日本銀行には「2%の物価安定目標を持続的・安定的に実現することを期待する」とし、政府・日銀の密接な連携のもとで政策運営に当たるとした。
通常は諮問会議に出席する赤沢亮正経済再生担当相は、日米関税交渉のため訪米中で、同日の会議は欠席した。内閣府によると、経済再生相が出席せずに諮問会議を開くのは14年5月以来。
(石破首相の発言などを追加して更新します)
--取材協力:広川高史.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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