米下院を通過したトランプ大統領の大型減税・歳出法案は、米財政赤字を今後10年間に2兆4200億ドル(約350兆円)膨らませる見込みだ。超党派機関の米議会予算局(CBO)が4日、新たな試算を示した。

いわゆる「大きくて美しい法案」に関する同試算は、2034年までの10年間で、基準予測と比べて歳入が3兆6700億ドル減少し、歳出は1兆2500億ドル減るとの予想に基づいている。

一段と深刻な米財政見通しを受けて、共和党の財政タカ派の間でこの法案への懸念が強まる恐れがある。トランプ氏の盟友である資産家イーロン・マスク氏は3日、同法案を痛烈に批判し、「この大規模な、常識外れで、利益誘導だらけの議会歳出法案は忌まわしい愚策だ」としていた。

下院共和党は先月、この法案を僅差で可決。上院では反対に直面しており、複数の議員がさまざまな修正を求めている。トランプ氏は4日、上院財政委員会の共和党議員と会合し、法案について協議する予定だ。

関税は赤字縮小に寄与

CBOはまた、5月半ば時点で発効したトランプ氏の関税政策により、米財政赤字は推計2兆8000億ドル縮小するとの見通しも示した。議会の民主党指導部からの要請を受け、この日書簡で公表した。

CBOのスウェーゲル局長は同書簡で、「CBOの見積もりには大きな不確実性が伴う」と警告し、トランプ政権が関税政策の方針を変更する可能性があることを一因に挙げた。

「さらに、米国がこれほどの規模の関税引き上げを実施するのは数十年ぶりで、それら関税の影響に関する実証的なデータはほとんど存在しない」とも同氏は言及した。

こうした前提条件を踏まえた上で、トランプ氏が5月13日までに実施した関税引き上げにより、2035年までの10年間で財政赤字は2兆5000億ドル削減されるとCBOは試算した。また、連邦政府の純借り入れが減ることで金利負担が軽減され、追加で5000億ドルの赤字削減が見込まれるという。他国・地域の報復措置などにより国内総生産(GDP)成長が抑制されるとの見通しも織り込むと、財政赤字の純減額は2兆8000億ドルと算出している。

原題:CBO Says GOP Tax Bill Would Add $2.4 Trillion to US Deficits (1)、CBO Projects Trump Tariffs to Cut Budget Gap by $2.8 Trillion(抜粋)

(第5段落以降に関税の影響を加えて、更新します)

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