失われた30年の主因といわれる人口減少

日本の生産年齢人口(15~64歳人口)は1995年をピークに減少しており、総人口も 2008年をピークに減少過程に入っている。そして、国立社会保障・人口問題研究所の中位推計によれば、2020年時点で1億2615万人存在した日本の総人口は、2070年には8700万人へと3割以上も減少することになっている。

このように、日本の総人口及び生産年齢人口の減少が中長期にわたって続くことは確実であり、日本企業や国民の悲観論の根本には人口減少への不安がある。

本稿では、過去の日本経済のいわゆる「失われた30年」の主因が人口減少によるものなのかを分析し、日本経済は人口減少の中でも豊かになれるのかを考察する。

図表1

今後の人口動態の想定

まずは、今後の人口動態の想定をしてみた。使用するデータは、前述の国立社会保障・人口問題研究所の中位推計とする。そして、想定する期間はデータが存在する2025~2070年の期間とした。

まず少子化については、仮に今後最重要課題とされる少子化対策の効果が表れ、足元で生まれる子供が労働力人口として期待される成人になるのは、今から約20年後の2040年台半ば頃である。

一方、高齢化については、人口構成上大きな塊である団塊ジュニアかつ就職氷河期世代が、後期高齢者入りするのも2040年代半ばである。また、総人口から労働力を担う20~69歳人口を除いた、いわゆる支えられる側の人口比率は2040年ごろまで横ばいとなる。

他方で外国人労働者が数倍規模で増加する見通しとなっており、高度な知識やスキルを持つ人材を増やすことができれば、生産性向上に大きく貢献する可能性がある。しかし、アジアを中心とした新興国からみて賃金が魅力的な水準を保てなければ、外国人労働者を呼びにくくなり、人口構成に大きく影響するような規模までには至らない可能性もあろう。

こうしたことから、2040年ごろまでを見通すと、今後の人口は生産年齢人口も含めて減少が加速することは不可避といえよう。

失われた30年の主因は資本投入量の低迷

ただ、成長会計(文末脚注)に基づけば、そもそも一国経済の供給力を示すとされる潜在GDPは、人口動態が大きく影響する労働投入量(就業者数+労働時間)のほかに、資本投入量と全要素生産性(以下、TFP)によって決まることになる。

このため、以下では内閣府が推計する潜在成長率とその要因分解を用いて、いわゆる「失われた30年」において、人口動態が最も影響する就業者数の変化がどの程度影響してきたかを分析した。

図表2

潜在成長率のデータが存在する81年を始点とした5年ごとの平均潜在成長率を要因分解した結果を見ると、90年代後半以降の成長率の鈍化は、圧倒的に資本投入量の伸び悩みであることがわかる。そして、人口動態が直接影響する就業者数も成長率の足を引っ張っているものの、潜在成長率鈍化の主因は人口減少ではないことがわかる。

なお、TFPが時代を通じて押し上げに寄与している一方で、労働時間が80年代後半以降に一貫して潜在成長率の押し下げに寄与していることからすれば、今後も人口減少が続いたとしても、労働時間の減少に歯止めをかけ、TFPと資本投入量の伸びを高めることができれば、潜在成長率を維持できる可能がある。