米中による関税の報復合戦がひとまず休戦となったことから、株式市場はある種の高揚感をともない大きく反発しています。

一方、為替市場では一時的にリスクオンによる米ドルの買戻しが見られたものの、足元ではドル円を始め対アジア通貨で乱高下するなど、株式市場の楽観ムードに水を差しかねない展開となっています。

こうした「ちぐはぐ」な印象を与える為替市場の動きの背景には、トランプ関税による世界景気の不透明感もさることながら、米中間の通商交渉の裏で積み上がった、ホワイトハウスの同盟国に対するいら立ちがあるのかもしれません。

米中歩み寄り後も神経質な展開が続くアジア通貨

5月14日のロンドン時間早朝、外国為替市場ではこれといった材料がない中でドル円が約1%も急落して、米中関税交渉の一時休戦から楽観ムードが支配的だったマーケットディーラーたちをざわつかせました。

その後、「米韓の高官が通商協議で為替政策を協議する」との報道が流れたことで韓国ウォンが急伸し、つられてドル円もあっという間に2円以上の円高となるなど、為替市場が大きく揺れ動くこととなりました。

疑心暗鬼が続く為替市場

暫くして、大手通信社が米当局の関係者の話として、「米韓の通商交渉では通貨政策を合意に盛り込まない」とするコメントを流したことでいったん動揺は収まりましたが、市場ではその後も疑心暗鬼が続いているようです。

というのも、トランプ政権は関税を武器にした対中戦略が大幅な譲歩に追い込まれたことから、次は為替をカードに攻勢に出るのでは、との懸念がくすぶっているからです。

市場参加者の間には、米中の関税合戦の過程で対中包囲網の構築に非協力的だった一部の同盟国に対して、「米国が為替による報復に踏み切るのではないか」とのうがった見方もあるようで、そうした「思惑」に市場が身構えているように見受けられます。