米国の百貨店とディスカウントチェーンは、中国の格安オンライン通販「Temu(テム)」や「SHEIN(シーイン)」からの消費者離れの恩恵を受けている。こうしたプラットフォームは、これまで利用してきた米関税制度の抜け穴がふさがれたことで失速しつつある。

調査会社コンシューマー・エッジ・リサーチは数百万件のクレジット・デビットカード取引からデータを集め、2025年1-2月にTemuやSHEINから少なくとも2回購入したものの、3-4月の購入回数がゼロだった消費者の支出データを調べた。メーシーズ傘下のブルーミングデールズやコールズといった百貨店に加え、ギャップ傘下のオールドネイビーなど格安アパレルブランドに消費者の「多額の」支出が流れたと同社は分析している。

トランプ米大統領は4月、輸入申告額が800ドル(約11万6000円)以下の場合に関税を免除するいわゆる「デミニミス(非課税基準額)」ルールについて、5月2日以降は中国・香港に適用しないと発表。この制度を活用し、中国の工場やサプライヤーから直接仕入れた商品を米消費者に格安で提供してきたTemuやSHEINにとって、状況は一変した。

その影響はすぐに顕在化した。コンシューマー・エッジによると、米消費者の支出の伸びは今年に入りTemuで50%、Sheinで30%に達した時期もあったが、4月は急激に落ち込んだ。両社から他の小売業者に流れた具体的な金額は記されていないが、買い物客の注文1回当たりの支出額は通常、Temuで約30ドル、Sheinでは約50ドルだったという。

コンシューマー・エッジのインサイト担当バイスプレジデント、マイケル・グンター氏は、「関税に関連した消費者行動の変化を示す初期の兆候だ」と指摘。トランプ関税の発表前から米消費者の支出の伸びは鈍化していたとも述べた。

TemuとSheinのサイトでの米消費者の閲覧時間も大幅に減少している。アプリ利用状況を調査するセンサー・タワーによると、Temuの1日当たり平均ユーザー数は今月に入り4120万人と、3月の5800万人から減少。Sheinでも3月の2920万人から2550万人に減った。

 

米国の小売業者にとって、こうした消費のシフトは歓迎すべきニュースだ。中国から衣料品の約10%を調達するギャップは、通期に関し2%程度の増収を想定。メーシーズは好業績の店舗への投資を軸とした業績改善戦略の一環として、今後2年で86店舗を閉鎖する計画だ。コールズも店舗閉鎖を進めているほか、5月に解任した最高経営責任者(CEO)の後任探しに着手している。

原題:US Shopper Retreat From Temu, Shein Boosts Macy’s, Kohl’s, Gap(抜粋)

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