(ブルームバーグ):ロンドンの金融街シティーに新本社を移転する計画の英銀HSBCホールディングスでは、経営幹部を悩ませる問題が起きている。最大7700人分のデスクを置けないのだ。関係者によればセントポール周辺に新たに改装された「パノラマ・セントポールズ」は従来、5000人分のスペース不足が予想されていたが、問題はそれより深刻となった。
オフィス勤務の義務化に、ロンドン在勤の人員が予想よりも多いことが重なったため、当初見通しを修正せざるを得なくなった。オフィス移転計画は新型コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)となった後に立てられたが、在宅勤務前提のスペース見積もりに基づいていたため、段階的な出社再開や福利厚生・協働スペースの需要拡大によって、より広い面積が必要となった。
HSBCの広報担当者は「当行は2027年に現在本部を置いているカナリー・ワーフから撤退し、セントポール周辺の新本部に移転する」との声明を電子メールで発表した。
同様の問題を抱え込んだ企業は他にもある。ジェーン・ストリートはロンドン社屋計画を拡大。ドイツ銀行はシティーの新本部ビルが手狭になった後、カナリーワーフのスペースを維持すると決定した。

HSBCの計画では来年、約5万5000平方メートルの新本社ビルへの移転を始めることになっている。このビルはBTグループの旧本社ビルを改装したもので、1人当たりスペースの業界標準(8平方メートル)に基づけば、最大6875人分しかデスクを置けず、全員が働くにはスペースが大幅に不足する。
HSBCはすでに別のスペースを確保する案を検討していると、ブルームバーグ・ニュースが昨年11月に報じた。
参考までにドイツ銀行がシティーのムーアフィールズ21番地に構えた新本部では、約5000のデスクが設置されたと提出資料に記されている。同本部ビルはHSBCの移転先とおよそ同じ広さのスペースを有する。ロンドンの高層ビル「ガーキン」は約4000人分のデスク設置スペースを有すると、建設業者のウェブサイトに記されている。つまりHSBCの不足スペースは、ガーキン2棟分に相当する。
ロンドンで大規模なオフィスを確保することが、いかに難しくなったかがうかがわれる。ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は先週、タイムズ紙のインタビューで選択肢の乏しさに不平をこぼした。モルガン・スタンレーは数年にわたって移転の可能性を検討した結果、現在の本社にとどまることを決めた。バンク・オブ・アメリカ(BofA)は移転の可能性を検討し始めた一方、JPモルガン・チェースは追加スペースを確保した。
こうした状況は、HSBCがかなり-ワーフのリース契約終了前に、追加スペースを確保できる可能性は低いことを示唆する。カナリーワーフの高層ビル「8カナダ・スクエア」を所有するカタール投資庁(QIA)が、HSBCに契約延長を提案する可能性もあるが、他の選択肢を提示することもあり得ると、関係者は述べた。
QIAおよびカナリー・ワーフ・グループの広報担当者はコメントを控えた。
原題:HSBC Grapples With Shortage of 7,700 Desks at New London HQ(抜粋)
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