(ブルームバーグ):香港金融管理局(HKMA、中央銀行に相当)は香港ドルの対米ドル相場の許容変動幅を防衛するため、香港ドル売り介入を継続したことを明らかにした。
ブルームバーグのHKMAページにアジア時間6日送られたアラートによると、香港ドル相場が許容変動幅の上限(1米ドル=7.75香港ドル)を試した後、HKMAは過去最大規模の605億香港ドル(約1兆1200億円)相当を売り、米ドルを購入。これに続き、2日以降4回目となるオペを通じ、さらに128億香港ドルを市場で売却した。
ドル安に加え、トランプ米政権が主要相手国・地域と貿易や関税を巡り合意に近く妥結するとの見方、米国例外主義への懐疑論などを背景に、アジア通貨が買われている。香港ドルは今四半期で0.4%上昇し、7.75香港ドルに接近した。

HKMAによる巨額の香港ドル売りは、高止まりする香港の借り入れコスト引き下げに寄与した。香港では数年ぶりの規模になると見込まれる電気自動車(EV)バッテリー大手、中国の寧徳時代新能源科技(CATL)の上場を控え、香港ドルに対する需要が高まっている。借り入れコストの低下は、米国の関税に直面する香港経済を下支えする可能性もある。
オーバーシー・チャイニーズ銀行(OCBC)の外国為替・金利戦略責任者、フランシス・チュン氏は「今後の上場などに伴い生じ得る流動性のひっ迫を、(HKMAの香港ドル売りが)緩和する可能性がある」と指摘。同氏は香港ドルが米ドルとのペッグ(連動)制を採用しているため、米ドルが下がる局面では他通貨と比較して軟調に推移するだろうと予想した。
HKMAの余偉文(エディ・ユー)総裁は香港議会で、キャリー取引の活発化と株式に関連した香港ドル需要を主な要因に、香港ドルには最近上昇バイアスがかかっていると説明。香港の金融市場は秩序立った動きを続けているとの見方を示した。
香港ドル需要は、今年に入り中国の投資家が香港株に資金を投じているという背景もある。香港上場の中国企業による配当金に関連した換金需要も、香港ドルへの需要を強めている。

通貨の上昇を抑えようとHKMAが今月2日に介入したのは、2020年以来だった。ただ、22年と23年にHKMAは許容変動幅の下限を守るため介入した。
ブルームバーグ・インテリジェンスのストラテジスト、スティーブン・チウ氏らが記したリポートによると、今回の介入合計額は2020年に記録した3835億香港ドルを上回る可能性が大きい。
貿易依存型のアジア諸国・地域の通貨は最近上昇しており、当局者の間で懸念が広がっている。通貨高は外国資金の流入を促し、輸入品の価格を押し下げる一方、輸出競争力を低下させ、企業に打撃を与える恐れもある。
また、台湾の中銀当局者は5日遅く、為替市場の安定が脅かされた場合には介入する用意があると指摘。台湾ドルは5日、一時ここ40年近くで最大の上昇率となっていた。
原題:Hong Kong Ramps Up FX Intervention to Defend Currency Peg(抜粋)
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