(ブルームバーグ):全国の物価の先行指標となる東京都区部消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は、4月に前月から伸びが加速し、1年9カ月ぶりの3%台となった。日本銀行が目標とする2%を上回るのは6カ月連続。総務省が25日に発表した。
コアCPIは前年比3.4%上昇し、市場予想(3.2%上昇)を上回った。都が昨年4月に開始した高校授業料の実質無償化による影響の一巡や、政府の電気・ガス代補助金の終了といった政策要因が全体を押し上げた。エネルギーが9.4%上昇、生鮮食品を除く食料は6.4%上昇と前月から伸びが拡大した。エネルギーも除くコアコアCPIは3.1%上昇と1年2カ月ぶりの3%台に乗せた。
4月の東京CPIは価格改定期ということもあり幅広い品目で価格転嫁が確認され、日銀の政策正常化路線を支える内容となった。ただ、今後はトランプ米政権の関税政策を受けて内外経済の減速が見込まれ、物価にも下押し圧力がかかる見通しだ。堅調に推移してきた賃金・物価動向に米関税の影響がどこまで波及するかがポイントになる。
大和証券の末広徹チーフエコノミストは、高校無償化の影響やエネルギー補助金縮小などの制度要因を割り引いてみる必要があるが、「今回のデータからは物価が弱まっている雰囲気はない」と指摘。企業は引き続き人件費や原材料費などの高騰を背景に価格転嫁しているとし、「日銀は来週の会合では、景気が大きく下振れない場合は利上げ路線を続けていくという情報発信になるのではないか」と語った。

コアCPIを上回る伸びが続く総合指数は3.5%上昇に伸びが拡大した。米類は93.8%上昇と比較可能な1971年1月以降で最大を更新。植田和男総裁は18日の国会答弁で足元の物価上昇について、米を含む食品価格上昇の影響が大きくなっているとしつつ、こうしたコストプッシュの影響に関しては「今後、徐々に緩和していく」との従来の見解を繰り返した。
賃上げの価格転嫁の動向を反映しやすいサービス価格は2.0%上昇と前月(0.8%上昇)から加速し、昨年3月以来の高い伸び。総務省によると、高校授業料無償化の影響一巡が主因だが、外食や民営家賃も上昇幅を拡大した。外食では人件費を反映させる動きもあるが、米など原材料費の上昇を理由にしているものが目立つという。
日銀は30日と5月1日に金融政策決定会合を開く。複数の関係者への取材によると、日銀は先行き2%の物価安定目標が実現していくシナリオを維持し、緩やかに利上げを進めていく従来の政策スタンスを継続する公算が大きい。米関税政策によって先行き不確実性が高まる中、来週の会合では現状維持が決まる見通しだ。
米関税政策を受け、エコノミストが想定する日銀の追加利上げ時期は後ずれしている。ブルームバーグが16-22日に実施したエコノミスト調査では、日銀が現在0.5%程度の政策金利を引き上げる時期の予想は、7月と10月の会合が24%で最多で、9月と来年1月が15%。来週の5月会合はゼロだった。
総務省の説明
- コアCPIは、4月の一部高校での授業料や入学金の値上げも押し上げに寄与
- 生鮮食品を除く食料は、小中学校の学校給食やビールなども上昇
- 4月の総合指数に対する政府の電気・ガス補助金の押し下げ寄与が0.16ポイントと前月の0.31ポイントから縮小し、エネルギーは上昇幅が拡大
- コアCPIの上昇品目数は全522品目のうち363品目で、前月の358品目から拡大
(エコノミストコメントや総務省の説明などを追加して更新しました)
--取材協力:藤岡徹.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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