米電気自動車(EV)メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は22日、米政府関連業務から「大幅に」手を引き、同社の経営に集中する考えを表明した。投資家の間では政府関連業務への関与がテスラへの注力を妨げているとの懸念が高まっていた。

マスク氏は決算発表に関するアナリスト向け電話会見で、「恐らく来月から、政府効率化省(DOGE)への時間配分は大幅に減少するだろう」と発言。「大統領の任期終了まで」ある程度の関与を続ける見通しだが、間もなくテスラにより時間を割くようになるだろうと述べた。

同氏はさらに、DOGEを率いる任務はほぼ完了すると述べ、来月から「テスラに大幅に時間を割く」と明言した。

マスク氏の発言を受け、テスラの株価は上げ幅を拡大し、一時7.8%上昇した。米東部時間午後7時43分(日本時間23日午前8時43分)時点では5.1%高。

過去3カ月間にマスク氏がDOGEの運営に多くの時間を費やしたことから、テスラ株は低迷。同氏の個人資産も今年に入り、1300億ドル(約18兆円)余り減少している。

ディープウォーター・アセット・マネジメントのマネジングパートナー、ジーン・マンスター氏は、「ブランドを回復する上で必要なのは、マスク氏がDOGEから身を引くことだ。それが最低限必要な措置だった」と指摘した。

決算発表

同社はこの日発表した決算報告書で、2025年通期の売上高増加見通しを撤回し、次の四半期に予想を見直す方針を示した。関税や、マスク氏の政治的言動に対する反発などが、同社に打撃を与えていることを示唆した。

テスラのディーラー(スペイン)

発表資料によると、1-3月(第1四半期)の調整後1株利益は27セントで、アナリスト予想平均を下回った。通期売上高が成長へ回帰するとした以前の見通しを撤回した代わりに、「車両事業の成長に向けて堅実な投資を行っている」と説明。これは生産の増加やより広範なマクロ経済環境といった要因に左右されるとした。

さらに、「グローバルな貿易政策の変化が、自動車とエネルギーのサプライチェーン、当社のコスト構造、耐久財および関連サービスの需要に与える影響を測定することは困難だ」との見解を示した。

テスラは昨年、通期売上高の成長目標を過去10年余りで初めて達成できなかった。今月発表した1-3月期の納車台数はアナリスト予想を下回った。

関税

マスク氏は決算会見で関税引き下げの必要性について引き続き訴えていく考えを明らかにし、この問題を巡るトランプ大統領との意見の違いをうかがわせた。ただ、同氏は関税の決定が「完全に大統領の裁量に委ねられている」とも述べた。

トランプ大統領の関税措置は世界的な自動車サプライチェーンの混乱を引き起こし、業界全体のコスト上昇を招く恐れがあることから、テスラの課題は深刻化している。カリフォルニア州とテキサス州に大規模工場を保有するテスラは他の多くの自動車メーカーに比べ影響は小さいと予想されるが、同社製車両には米国製以外の部品も一部含まれており、同社は影響を受ける可能性を警告している。

マスク氏はアナリストに対し、テスラがコスト上昇リスクの最小化などを目的に現地調達網の構築に取り組んでいると説明。「関税の影響は自動車メーカーでは最小」と述べた上で、関税は依然として対応が難しいと強調した。

同社は関税について、EV事業よりエネルギー事業に「より大きな影響」を与えるとの見方も示した。同社の大型蓄電池システム「メガパック」は、中国製のLFP電池に大きく依存している。

消費者の反発

マスク氏が欧州で物議を醸す政治勢力への支持を表明したことや、同氏とトランプ氏との密接な関係は、世界中で反発を招いている。テスラのショールームや充電施設は特に米国で抗議活動や破壊行為の標的となっている。

ウェドブッシュ・セキュリティーズのアナリスト、ダン・アイブス氏は今週、マスク氏がDOGEへの関与でブランドに与えたダメージにより15-20%の永続的な需要減少が生じる恐れがあると指摘した。

テスラは「政治的な世論の変化」も「短期的には当社の製品需要に有意な影響を与える可能性がある」とした。

新型車の計画については、より手頃な価格のモデルを含めて今年前半の生産開始に向けて順調に進んでいると説明した。

原題:Musk to Refocus on Ailing Tesla With DOGE Work ‘Mostly Done’、Musk Says He’ll Limit Time With US Government to Focus on Tesla、Tesla Rallies as Musk Says He’ll Limit Time With Government (2)、(抜粋)

(マスク氏の発言などを追加して更新します)

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