(ブルームバーグ):国内損害保険大手のMS&ADインシュアランスグループホールディングスは、北米事業を強化する方針だ。企業の合併・買収(M&A)も視野に入れた新規投資や既存事業の拡充に、最大約7000億円を投資して同地域の事業利益の倍増を目指す。
船曳真一郎社長はブルームバーグとのインタビューで、具体的な投資先や事業領域は今後検討するとし、世界最大の北米市場で「近い将来、倍の利益を上げていけるよう体制強化を図らないといけない」と述べた。海外で得たノウハウや利益は日本事業の成長や株主還元に充てていく考え。
世界の損害保険会社としての位置付けについて船曳氏は、アジアでは「一番シェアが高い」ほか、欧州でも日系損保の中では比較的シェアが高いと説明。これに対して、「北米は3番手だったので、ここでどう1番手を目指していくかだ」と意欲を見せた。
人口減少で国内の事業環境が厳しくなる中、大手損保は海外企業の買収などにより事業基盤を拡大している。MS&ADも3月に傘下の三井住友海上火災保険が特定のリスクに強みを持つ同業の米WRバークレー(WRB)株の15%を取得すると発表したばかりだが、今後も北米での投資を継続する。
MS&ADは、政策保有株の売却資金を成長投資に振り向ける方針を公表済み。米WRBへの出資分などを考慮すると、今後投資に回せる金額は約6000億-7000億円になるという。同社はカナダやメキシコを含む2025年3月期の米州事業全体の純利益について2月時点で前の期比3.5倍の166億円になると予想している。
ガバナンス再構築へ
国内事業については3月に、傘下の三井住友海上とあいおいニッセイ同和損害保険が27年4月の合併に向けて検討を進めると発表した。
船曳氏は、金融庁から業務改善命令を受けた企業向け保険料の事前調整や個人情報漏えいなどの問題について、「一番欠けていたのはリスクを予兆する力」だったと回顧。ガバナンス(企業統治)の再構築に向け、「二つの同規模の保険会社があり、体制が分散するのは最適な状態ではない」と判断したという。
傘下2社の合併による事業費削減などについてはコメントを控えた。合併新会社では、三井住友海上が年功序列型を廃止する形で今年度から始めた能力重視の人事制度が考え方のベースとなるとし、「全員がスキルを身に付ければ余剰人員は生じない」との認識を示した。
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