9日の日本市場は株式が大幅反落し、日経平均株価の下げ幅は一時1700円を超す場面があった。米国の相互関税が全面発動され、対抗姿勢を強める中国を中心とした貿易戦争の激化が懸念された。債券は金利変動リスクを削減する動きから超長期金利が急騰し、為替は低リスク通貨の円が買われた。

トランプ米政権は相互関税を予定通り全面的に発動した。報復関税などで対抗姿勢を強める中国に対しては計104%の関税賦課となる。中国の李強首相は、悪影響を及ぼす外的ショックを「完全に相殺」できる十分な政策手段が中国にはあると語った。

野村証券の沢田麻希ストラテジストは「中国側からのさらなる報復関税が警戒されている」とし、市場全体でリスク回避の動きがあると指摘。関税の応酬が激しくなれば、「各国景気が想定以上に悪化する懸念が高まり、上げに転じるまでには時間がかかるだろう」との認識を示した。

市場の不安定化を受け日本銀行、財務省、金融庁は市場の不安定化を受け、9日午後4時から国際金融資本市場に関わる情報交換会合(3者会合)を開催すると発表。長期・超金利は上昇幅を縮小した。

T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジストは、3者会合の相場への影響について「円安誘導と思われることになれば、逆に交渉が難しくなる」と言及。半面、債券の買い入れに関して何らかの言及があれば、動揺が落ち着くともみている。

株式

東京株式相場は大幅反落し、TOPIXと日経平均の下落率は3%を超えた。中国に最大104%の関税を賦課するというホワイトハウス当局者の発言を受け、米中貿易戦争の激化懸念からリスク回避の売りが終日優勢。午後に相互関税が発効され、両指数は下げ幅を拡大した。

T&Dアセットの浪岡氏は、関税発効後の下げ幅の拡大について「あきらめの境地」と指摘。「明らかに割安なのは投資家の買いを誘う材料にはなるが、その先どこまで買っていいものなのかは不透明感が強い」と話した。

東証33業種は非鉄金属や鉱業など資源セクター、保険や銀行など金融セクター、電機など輸出セクター中心に全て下落。TOPIX採用の1690銘柄のうち、約9割が安い。欧州連合(EU)が自動車向け炭素繊維の原則禁止検討と日本経済新聞が報じ、東レなど繊維製品株も急落。米調査会社が家庭用ゲーム機「スイッチ2」の2025年世界販売台数の予想を引き下げ、任天堂株も安い。

債券

債券市場では超長期の金利が急騰(価格は下落)。米関税政策のショックが広がる中、投資家はボラティリティー上昇を嫌気して様子見姿勢を強めた。午後は3者会合開催の発表を受けて金利上昇幅が縮小し、先物は上昇に転じた。

大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジストは、日銀が実施した超長期債の買い入れオペ結果が弱く、午後に一段と売られたと指摘。10日の5年国債入札も警戒される中、債券市場にもストレスがかかっており、「落ち着くまでしばらく値動きの荒い展開が続くだろう」と述べた。

日銀が実施した残存期間10年超25年以下の買い入れオペの結果は、応札倍率が3.71倍と2023年12月以来の高水準を記録し、売り圧力の強さを示した。平均落札利回り格差は0.234%だった。

新発国債利回り(午後3時時点)

外国為替

東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=144円台半ばまで上昇し、上昇率が1%を超えた。米政権による相互関税の全面発動で円買いが優勢だった。3者会合開催の発表後は145円台前半に戻した。

あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、関税政策発動で米国の資産を売る動きが強まり、金利がパニック的な動きになっている中、ドルが売られたと解説した。

日銀の植田和男総裁は9日の国会答弁で、米国による自動車関税や相互関税の導入で内外の経済・物価を巡る不確実性は高まったとの認識を改めて表明。一方、これまでの利上げの背景について「経済・物価情勢が改善する下で低金利を継続すると、金融緩和の度合いが過大なものとなる恐れがある」との見解も示した。植田総裁はこの日午後に信託大会でもあいさつする。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:山中英典、横山桃花、日高正裕.

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