7日の米株式市場でトランプ米大統領が関税を90日間停止するとのうわさが駆け巡った。投資家は約7分後、うわさは真実ではないと気付き、株を買い上げるのを慌てて停止した。

とはいえ、同日のそれまでの取引や先週終盤にみられた抑制のきかないペースの売りには戻らなかった。米主要株価指数は引けまで一進一退となり、ある種の停滞に陥った。

その一因は、トランプ氏が引き起こした世界的な貿易戦争の潜在的な影響が二択しかないことが明確になったことだ。もしトランプ氏が言質通り関税を課せば、米経済は急速に縮小し、S&P500種株価指数は弱気相場入りするだろう。だが関税を撤廃すれば、景気は上向き、株価は再び最高値を更新するかもしれない。

ガーバー・カワサキ・ウェルス・アンド・インベストメント・マネジメントのロス・ガーバー最高経営責任者(CEO)は「もしトランプ氏が明日、起床した時に『やらない』と言えば、市場は最高値更新に再び向かうだろう」と話す。

7日は関税の発効が遅れるといううわさだけで米株式市場の時価総額が2兆5000億ドル(約370兆円)膨らんだことが分かった。先週終盤の2日間でS&P500種は約10%下落したが、その中で資金を引き揚げた投資家にこうした機会を見送るよう促すことは難しい。

だがトランプ氏がこれを続ければどうなるだろうか。今後、安心できそうな状況になるにしても、株価は既に弱気相場に向かっており、政策転換の見通しを立てるのは難しい。

政権が一貫性のないメッセージを発していることも逆風だ。50カ国、あるいは70カ国と間で交渉が進行中だと一部の閣僚が発言する一方、ナバロ上級顧問(貿易・製造業担当)は、交渉の余地はないと述べている。

トランプ大統領自身もメッセージを混乱させている。7日午後には「恒久的な関税になり得るが、交渉の余地もある。関税の他に必要なものがあるからだ」と述べた。

こうしたちぐはぐな対応を受け、トレーダーは困惑している。

マップシグナルズのチーフ投資ストラテジスト、アレック・ヤング氏は「個人的にはこの種のマイナス材料をうまく活用して利益を得ることが多いが、今回は問題の原因が異なるため少し事情が違う」とした上で、「もしこうした政策が実施され、何年も続くなら米株式市場は構造的に変わるだろう」と分析した。

原題:The 7-Minute $2.5 Trillion Stock Rally Confounds Wary Investors(抜粋)

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